エンジン4発お尻に全集中! 不遇の超ユニーク機「VC-10」なぜそのカタチに? 軍事で生き長らえ

「VC-10」誕生の背景とは

 この原案が実用化されたのが、1949(昭和24)年初飛行のイギリス初のジェット旅客機であるデ・ハビランドDH.106「コメット」です。ただ、実用化に向け技術的な課題に苦闘している間に、707やDC-8といったアメリカの航空機メーカーにシェアを奪われてしまいました。

 当時イギリス最大の航空会社だったBOAC(英国海外航空。現在のブリティッシュ・エアウェイズ)は1950年代、ボーイング707にロールズ・ロイス社のエンジンを搭載して運航していました。しかし旧英連邦のアフリカ線のなかには、標高が高い空港も。高度が高いと空気が薄くなることから、離着陸にはエンジンパワーが必要です。ここに就航するに際し、707はパワー不足を露呈したため、BOACは、国内の航空機メーカーへ、こういった路線に対応できるジェット旅客機の開発を依頼します。

 依頼を受けたのは、「コメット」を開発したデ・ハビランド社、老舗の旅客機メーカーのハンドレページ社、そして、まだ当時草創期だったジェット爆撃機を開発しイギリス空軍(RAF)で採用されたほか、ターボプロップ旅客機バイカウントを開発していたビッカース社の3社でした。

 そのようななか、これらイギリス国内航空メーカーの統合などの動きもあり、政府もBOAC社の要求を満たす機体の開発に関与します。その結果、デ・ハビランド社の構想をベースにビッカース社が開発に着手することとなりました。これが、のちのVC-10です。

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ボーイング707のベースとなった試作機「367-80」(画像:ボーイング)。

 4発リアジェットという、今でもめったに見ないエンジンレイアウトの設計の主眼としては、要求にしたがって離陸性能をとにかく上げることだったといえるでしょう。

 エンジンを主翼に設置しないことで、強力な高揚力装置を装備できるようになりました。また、「コメット」では、翼と胴体の付け根にエンジンを搭載する方法が採用されていましたが、いくつかの難点があり、尾部にエンジンを搭載することになりました。

 加えて、胴体後部にエンジンが鎮座しているため、水平尾翼を垂直尾翼の上部へT字型に配置しています。これは、離着陸性能において、主翼からの後流の影響を受けにくくなり、効率が高いデザインといえます。

 この設計により、BOACからの要求を満たすことができたのですが、時代が味方につきません。運航を開始する頃には、エンジンが発達して機体の性能が上がり、わざわざ路線固有の性能を持つ機体の必要性がなくなってしまったのです。

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