日本の航空モノづくり危機 旅客需要の回復後も停滞必至 失うわけにいかないその意義【Merkmal】
航空需要の蒸発により、エアラインだけでなく、日本の航空産業が厳しい状況に置かれている。新型コロナの影響を脱し、航空需要の回復が見込まれてもなお、好転は遅れると見られる。背景には「売れる飛行機」の変化がある。
航空需要は回復しても苦しい状況に置かれる日本
その一方、ワクチンの接種が進むアメリカやヨーロッパでは旅行規制の緩和が進んでおり、これら欧米諸国での旅客機需要の回復は、IATAの予測よりも早く進むとの見方もある。ただ、その旅客機需要の回復が、そのまま日本の航空産業の生産額回復につながるわけではない。
エアバスは2021年5月28日に発表した最新の生産計画で、航空機需要の回復は同社のA320ファミリーやボーイングの737のような、短~中距離路線で使用する単通路機が牽引すると述べている。エアバスはA320ファミリーの月間生産機数を現在の40機から、2021年第4四半期(10~12月)には45機へと増加させ、より小型のA220に関しても、2022年初頭には現在の5機から6機に増加させる方針を明らかにしている。
単通路機が旅客機需要回復を牽引するというエアバスの予測は筆者(竹内 修:航空ジャーナリスト)も同意するところだが、IHIがエアバスA320neo用のPW-1100G-JMエンジン、三菱重工業のベトナム法人「MHIVA」(Mitsubishi Aerospace Vietnam Co.,Ltd)が737MAXのフラップの生産に携わっているものの、実のところA320ファミリーと737ファミリーへの日本の航空産業の参画は大きなものではない。
日本の航空産業は、ボーイングのより大きな双通路型旅客機である777と787の下請け受注に、大きく依存しているのだ。
長距離路線に使用される双通路型旅客機の需要回復は単通路型旅客機よりも遅くなることが見込まれており、エアバスは双通路型旅客機の増産には慎重な姿勢を示している。ボーイングも日本企業の参画の度合いが高い787を月産14機(2020年6月以前)から5機へ、777を月産5機(2020年第2四半期以前)から2機へとそれぞれ減産しており、 また新型旅客機777Xの初号機納入を2023年に延期している。
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