英露がクリミア沖での軍艦の通航めぐり応酬 警告射撃に示威飛行…非はどちらに?

ロシアがとった措置の考えられ得る根拠

 ただ、今回の事件が発生した海域をロシアの領海と仮定するにしても、先述したように領海内の軍艦には無害通航権が認められているはずです。それでは、ロシア側はどのような根拠で「ディフェンダー」に対して警告射撃や爆弾投下を実施したと考えられるのでしょうか。

 まず、ロシアの立場になって考えてみると、今回「ディフェンダー」は当該海域を「ウクライナの領海」と主張するために航行していたと考えられます。そのため、ロシアとしてはこれを自国の平和や安全を害する行動と捉え、「無害通航」を構成する要件のうち「無害性」が失われたと判断して、「ディフェンダー」が「無害でない通航」を行っていると整理した可能性が考えられます。

 その場合、ロシアは無害でない通航を行っている「ディフェンダー」に対して、UNCLOS第25条に基づき、無害でない通航を防止し、これをやめさせるために必要な措置をとることができます。従って、今回の措置をこうした根拠に基づくものと整理することは可能です。

 もうひとつの可能性として考えられるのは、「ディフェンダー」が、領海に関するロシアの国内法令に違反したことを根拠に、「沿岸国の法令に違反し、かつ法令への遵守要請を無視した外国軍艦に対して領海外への退去を要請できる」と定めるUNCLOS第30条に基づく措置をとったというものです。これには過去に実例があり、2018年にロシアの沿岸警備隊の艦艇がウクライナの軍艦3隻に対して船体射撃をしたうえ、これらの艦艇を「国境侵犯」の罪で拿捕し、その乗員を拘束したという事件が発生しています。

【画像】ロシア国防省が公開した「ディフェンダー」への一連の対応の様子

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