アフガニスタン退避支援に自衛隊派遣 法的に課題も? 「人道と遵法」どう折り合うのか

指摘しうる問題点と今後の課題

 また、今回の自衛隊派遣についてはいくつかの問題点が挙げられます。たとえば「在外邦人等の陸上輸送」が想定されていないという点です。

「在外邦人等の輸送」は、基本的に航空機によって実施されることが想定されていますが、自衛隊法第84条の4第3項に基づき、車両を使用した陸上輸送を行うこともできます。しかし今回の派遣では、自衛隊による陸上輸送は想定されておらず、退避希望者は自衛隊の活動拠点であるカブール空港まで自力でたどり着く必要があるのです。

 陸上輸送を行うことができない理由のひとつとして考えられるのは、輸送活動の実施に関する前提条件との抵触です。すでに説明した通り、「在外邦人等の輸送」を行う場合には、これに用いられる航空機や車両の運行に関する安全が確保されている必要があります。ここでいう「安全」というのは、航空機や車両の運行に支障をきたす状況が発生していないことを指すと解されています。

 加藤官房長官によれば、輸送機の活動場所であるカブール国際空港はアメリカ軍により安全が確保されているため、自衛隊の活動に問題はないと判断されています。しかし、空港の外側に関してはアメリカ軍のコントロールが行き届いていないため、輸送に際しての安全が確保されていないのです。

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2021年8月22日撮影、カブール国際空港で避難民の幼児をあやすアメリカ海兵隊の兵士(画像:アメリカ海兵隊)。

 また「在外邦人等の輸送」と、より危険な状況下でも日本人などを救出することができる「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)は、基本的に領域国からの同意が得られていることが前提とされており、とくに後者の「在外邦人等保護措置」では、これを実施する際の要件として「領域国の同意」が自衛隊法上も明記されています。したがって、今後も同様の事態が発生した際に、もし「在外邦人等の輸送」では対応できないような緊迫した状況が生起した場合、現地にいる日本人の救出を行うことができなくなる可能性が高いのです。

 そこで、今後の課題として、領域国の同意が得られなかった場合でも在外邦人などを保護することができるよう、国内法の整備を進めるとともに、国際法上の説明もあわせて整理する必要があります。

 いずれにせよ、今回派遣された自衛隊の部隊が、任務を完遂して全員無事、日本に帰国されることを強く願います。

【了】

【写真】2021年8月21日撮影 カブール国際空港の警備の様子

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 領域国の同意を得なければいけないと規定されてはいるものの、その「領域」が「国」の態をなしていない有り様なのだから、そもそもこの条文の適用対象ではないようにも思える。