函館本線「山線」一部のみ存続すべき? 並行在来線問題の焦点「余市~小樽」 溢れる人人人
必要なのは「これまでにこだわらない改造」?
ただ塩谷駅、蘭島駅近辺の線路はカーブも多くトンネルも狭隘で、LRT化やバス専用道化にはあまり適さないように感じます。「余市~小樽20分強」という切り札は、現在の鉄道車両による高速運転があってこそ成立するものではないでしょうか。
一方で、海岸線に近い国道を走るバスも、切り立った崖の下を走る区間が長いため災害時の不安定さと、小樽市内における「稲穂5丁目の右左折」「小樽駅バスターミナルへの進入」といった箇所での渋滞リスクなどがあります。前者は2018年、国道5号線に忍路トンネル、フゴッペトンネルが開通したことで、ある程度はリスクが軽減されました。また後者に関しては、一部区間のみのバス専用道化は有効に働くかもしれません。
余市町は2014(平成26)年のNHKドラマ「マッサン」効果で来訪客が激増しましたが、それに際して駅のICカード対応やエレベーターの設置、列車の増便といった余市町からJR北海道への要望は、ほとんど実現しませんでした。コロナ禍の前には国内トップクラスの地価上昇を示すほど“インバウンド需要”に沸いていた倶知安駅ですら、スーツケースを抱えて階段と長い跨線橋を通過しない状態は今も変わっていません。鉄道を残す場合、「現在の設備のままでいいのか」という問題もあります。
沿線の協議会は、現状で3年後(2024年)頃までに今後の方針を決定する予定です。しかし、都市計画の関係で結論を急ぐ倶知安町や、鉄道が存続した場合の負担に難色を示す長万部町の姿勢などもあり、長万部~余市間の結論は少し早めに出るかもしれません。
一方の余市町にとって、バス転換による所要時間の増加は、住宅団地の誘致や定住促進などに生かしてきた「札幌・小樽に近い」という好要素を失いかねないのではないでしょうか。100万都市札幌の“近郊”であるにもかかわらず、油断すると涙腺が緩みそうなくらい美しい夕陽や透明な海を眺められる余市町が、都会からの近さを生かし続けることができるか。その鍵を握る交通手段は、鉄道やバスの現状にこだわらない再構築が必要だと感じます。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
「フコツペトンネル」とありますが、正しくは「フゴッペトンネル」です。
ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。
倶知安駅ですら、スーツケースを抱えて階段と長い跨線橋を通過しない状態は今も変わっていません
⇒ この文章は変です。「通過しない」は『通過しなければならない』でないと文脈が通りません。
余市駅か仁木駅まで電化区間を延長して、余市駅ー長万部駅を廃止という案は?