なぜ? 津軽海峡の真ん中は日本じゃない 中露艦隊が通航しても文句をいえないワケ

津軽海峡を中露の艦艇が大挙、通航しました。日本としては自宅の庭を、凶器を携えて歩かれたようにも思えますが、法的にはなんのお咎めもありません。むしろ、あえて海峡を明け渡しているともいえます。もちろんワケありです。

「特定海域」の意義とは?

 今回の中国・ロシア艦隊の通航を背景として、「特定海域を廃止し、全て領海に含めてしまうべき」という主張も見られますが、これについてはもう少し冷静になるべきだと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

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2021年10月18日に津軽海峡を通航したロシア海軍 ウロダイI級駆逐艦 548(画像:統合幕僚監部)。

 まず、津軽海峡全体を領海としてしまうと、これはUNCLOS上の、公海と公海を結ぶ国際海峡ということになります。そして、この国際海峡においては、通常の領海内における「無害通航権」ではなく、そこから沿岸国(この場合は日本)の権利などをさらに制約した「通過通航権」というものが航行する船舶などに対して認められるのです。

 この通過通航権の下では、たとえば、領海内では認められていない潜水艦による潜没航行が認められていると解されています。ほかにも、通常であれば領海の上空は領空にあたるため、他国の航空機が沿岸国の許可なく領海の上空を通過すれば領空侵犯となるところ、国際海峡においては通過通航権に基づく上空通過の自由が認められています。

 ひるがえって、現状の津軽海峡においては、こうした潜水艦による潜没航行や航空機による上空通過の自由は海峡中央部にある公海部分に限られ、その外側の領海部分ではこうしたものは認められません。しかし、もし津軽海峡全体を領海としてしまえば、海峡全体でこれが認められてしまうことになるのです。

 現状維持か、それとも変更か、それは一時の感情論ではなく長期的な視点に立った冷静な考えに基づいて行われるべきではないでしょうか。

【了】

【写真】津軽海峡を通過した中国&ロシアの艦艇

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

1件のコメント

  1. 敵味方識別機雷を敷設されれば、領海か否かに関わらず、戦時下の敵勢力艦船の航行は不可能なので、いくら平時に通過されても支障は無いでしょう

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