フランス生まれの「甲鉄艦」なぜ5か国も渡り歩いた? そもそも何しにニッポンへ

時は19世紀後半、何度も艦名を変えながらフランス、デンマーク、キューバ、アメリカを渡り歩いた軍艦がありました。やがてこの艦は来日し、幕末の動乱では幕府と官軍による争奪戦の的にも。稀に見る数奇な運命をたどった軍艦の物語です。

「甲鉄艦」奪取計画

 幕府の軍事を統括していた勝海舟は、官軍側へ幕府海軍の軍艦引き渡しを始めましたが、この頃、艦隊司令官であった榎本武揚は、降伏を拒否して「開陽丸」ほかの手勢を率いて江戸を脱出し、蝦夷地で箱館(現在の函館)政府を樹立します。越後や東北で幕府側の抵抗が続くなか、「開陽丸」は11月15日に江差沖で嵐のために沈没したため、箱館政府は戦力維持のために「甲鉄艦」の奪取を計画します。

 1869年3月25日、箱館を目指す官軍の艦隊が宮古湾に停泊していました。そこを旧幕府艦隊が急襲し、「甲鉄艦」に体当たりした「回天」から陸兵が乗り込みます。ちなみにこの時、切り込み隊には元新選組の土方歳三がいた一方、官軍の「春日丸」には日露戦争で連合艦隊司令長官となる若き日の東郷平八郎が乗り組んでいました。

 この宮古湾での奪取作戦は官軍の反撃で失敗。最終的に、旧幕府艦隊は箱館戦争(5月~6月)において「甲鉄艦」を主力とする新政府艦隊と戦って壊滅します。

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箱館戦争で旧幕府艦隊を砲撃する「甲鉄艦」(画像:Illustrated London News)。

 こうして、戊辰戦争や箱館戦争を生き抜いた「甲鉄艦」は、徳川幕府から引き継いだ4隻に薩摩や長州などから献上された軍艦などとともに、旧日本海軍の草創期を支えることとなります。「甲鉄艦」は1870年に「東艦」と改名し、佐賀の乱や台湾出兵、さらには西南戦争に参戦したのち、1888年に除籍されて、その波乱の生涯を終えました。

【了】

※一部修正しました(11月22日11時44分)。

【写真】「甲鉄艦」の艦首アップほか

Writer:

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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