憧れの“寝台特急シングル個室”も格安で 客車の宿「ブルートレインたらぎ」ますます貴重な存在に

トレインホテル開業の陰に「そもそもホテルが欲しい!」

「ブルートレインたらぎ」がこの地に開業した背景には、多良木町が長く抱えていた、宿泊施設不足という課題がありました。

 熊本県球磨地方のホテル・旅館などは観光の拠点である人吉市に集積していますが、球磨地方は球磨川に沿い東西に長く延びています。宿泊の需要としては観光だけでなく、工事関係者などのほか、多良木町には体育館、武道館、陸上競技場などがあり、スポーツチームや部活動の合宿などもさかんに行われていました。しかし、この町にあったのは定員13名のビジネスホテルと農家民宿が3軒。近隣の錦町、湯前町も温泉旅館などがぽつぽつとあるのみで、“大人数が手軽に安く泊まれる宿泊施設”が必要とされていたのです。

 そこに「はやぶさ」運行終了のタイミングが重なり、ブルートレインの客室をそのまま利用したトレインホテル構想が浮上しました。多良木駅はかつて木材の積出で賑わっていたこともあって、貨物ヤード跡という絶好の“ヨコ長スペース”もあり、また鉄道ファンの利用が多いと想定されるトレインホテルなら、くま川鉄道を利用して来訪してくれるだろうという目算もあったそうです。当時は鹿児島県阿久根市で同様のトレインホテル(現在は閉鎖)があり、いろいろと参考にすることもできました。

 その後、町は「はやぶさ」車両を約258万で買い取ることに成功します。熊本の車両基地から車両を人吉まで回送し、トレーラーに載せかえ多良木まで運搬する費用に約1100万円、土地の造成、レールや屋根の設置、宿泊施設としての改装に約4300万。「ブルートレインたらぎ」と同等の収容人数(48人)を持つ宿泊施設を建設するよりは、ある程度安く済ませることができたと言えるでしょう。

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正面入口(宮武和多哉撮影)。

 なお、宿泊施設とするにあたっては、寝台列車の内装を最大限に活かしています。トイレは目立たない場所に別棟で新設、お風呂は目の前の温泉施設を1回利用無料にすることで対処。これらは車両メンテナンスを軽減する工夫です。

 こうして「ブルートレインたらぎ」がオープンすると、念願の“ブルトレ乗車”を果たすための利用者も多く、初年度の宿泊客が3561人と当初の想定を1000人以上も上回ったといいます。また、やはり合宿での利用がとても多く、半数近くを熊本県内からの利用が占めていたそうです。

【個・室・最・高!】ブルートレインの宿 内部を写真で見る

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コメント

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1件のコメント

  1. ブルートレインたらぎの個室はB寝台ソロなので寝台料金は6000円ですね
    今なら消費税があるから6600円かな