なぜ「空中給油機」がウクライナ向け物資運んだ? 空自KC-767 実は超使える激レア機

数は少ないけど他機にはないメリットも

 加えてKC-767は、航空自衛隊が保有する各種輸送機のなかで、最も遠くまで飛行できる性能も持っています。たとえば、航空自衛隊最新のC-2輸送機の場合、36tの荷物を積んだ状態では、航続距離は約4500kmになります。

 一方、KC-767は、30t搭載時で約7200km飛行することができます。ちなみに航空自衛隊には約1万4000kmの最長航続距離を誇る政府専用機もありますが、こちらは主に要人輸送がメインのため、今回のような純粋な輸送任務に投入されることはほとんどありません。

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航空観閲式で飛行するKC-767。旅客機ベースの機体は大きく、空中給油機としても余裕ある設計となっている(武若雅哉撮影)。

 航空自衛隊は2022年現在、新型の空中給油・輸送機としてKC-46の導入を進めています。同機は2021年10月に初号機、2022年2月に2号機が、それぞれ鳥取県にある美保基地に到着しました。

 一見するとKC-46はKC-767とよく似ていますが、それもそのはず。両機は姉妹機といえる間柄で、KC-767の能力発展型がKC-46になります。KC-46にはKC-767にない「プローブ・アンド・ドローグ方式」という給油方法も選択することができます。

 この「プローブ・アンド・ドローグ方式」は、航空自衛隊ではUH-60J救難ヘリコプターなどが用いる方式で、従来のKC-767では対応していませんでした。また陸上自衛隊が運用するV-22「オスプレイ」の空中給油方法もこのタイプであるため、南西諸島のような空港が少ない空域での作戦をより有利に展開することができるようになるといわれています。

 航空自衛隊の輸送機を見た場合、数的に主力になるのは国産のC-2で、その次がC-130Hです。ただ、KC-767は数こそ少ないもの航続距離が最も長いというアドバンテージを有しています。その長所を生かす形で、最新型のKC-46とタッグを組んで輸送任務と空中給油任務を使い分けながら、今後も重用され続けることは間違いないでしょう。

【了】

【原型ボーイング767との違いも】KC-767の外観&機内をイッキ見

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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コメント

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4件のコメント

  1. あくまで、飛行場が正常に稼働している状態なら良い飛行機ですね。

    東日本大地震の津波に襲われて滑走路にゴミが散らばっていたり、リフトが動かない場合はリアハッチのC130HやC2でなければスムーズな作業が出来ません。

  2. ウクライナ🇺🇦の支援に乗り出した日本🇯🇵政府は想定外でした。日本🇯🇵は何時も他国の顔色を伺い乍ら決断が出来ませんでした.

    • なぜまいかいはたをたてるのですか

  3. こういう情報が世間に広まることで自衛隊への予算がどのような用途に使われ、国民や世界に貢献しているのか理解されることがなにより大切。