陸自の新型「トラック改造自走砲」ようやく実射初披露 「19式装輪15榴」機動性は抜群!
総火演で実射を見せるか?
車体が安定しないのであれば、クレーン車のようなアウトリガー(転倒防止用の支え)を装備すればよいのでは、と思われますが、そうした場合、射撃動作に加えてこのアウトリガーの操作が必要になります。
これでは、「速やかに撃って速やかに離脱する」というこの種の車両、すなわち自走砲のコンセプトから外れてしまいます。そのため、車体後部に取り付けられた底板だけで車体を安定させなければならないという制約があるなかで、実弾射撃に関する研究が行われていたのでしょう。
こうした研究射撃のため、特科教導隊は北海道にある日本最大の演習場である矢臼別演習場などで射撃を繰り返して、19式装輪自走155mmりゅう弾砲が最も安定する射撃姿勢を探求し、ようやく、矢臼別演習場よりも狭い東富士演習場でも安定して射撃できるとの判断が下ったと考えられます。この結果を生み出すまでには約2年の年月が掛かりました。
ちなみに、従来、陸上自衛隊が装備してきた自走りゅう弾砲はすべて履帯、いわゆるキャタピラ駆動の装軌車体ばかりであったため、ここまで車体の安定性を研究する必要はなかったようです。つまり、長い年月を掛けたのは、陸上自衛隊で初めてのタイヤを履いた装輪自走砲であるがゆえの課題だったともいえます。
関係者の努力の結果として東富士演習場での実弾射撃に成功した装輪15榴。2020年度から富士総合火力演習の開催時期が8月末から5月末に変更されたため、そこでの披露に向け、これから演習場での射撃機会も増していくことでしょう。
なお、今回の公開実射訓練では半自動装てん装置は使われず、1発ずつ手動で装填されていました。そのため、今年の総火演では半自動装てん装置が使われるのか、その部分も注目です。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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