ウクライナ支援が「参戦」にはならないワケ 背景に「戦争」「中立」という概念の変遷

中立法に関する日本の立場

 一方で、日本政府はこうした中立法に関して、現在の国際法の下ではもはや伝統的な中立という概念は維持され得ないと整理しています。たとえば、ベトナム戦争に際してアメリカ軍が日本の基地を使用していたことに関連して、日本政府はアメリカの行動を合法な自衛権の行使と整理した上で、そのような合法な措置をとっている国に対して基地の提供を通じた支援を実施することは問題ないという整理を行っています。

 また、今回のウクライナへの支援に関しても、日本政府は国内上の制約である「防衛装備移転三原則」などの観点での整理は行っていますが、国際法上の説明はとくになされていません。つまり、日本政府としては、今回のウクライナへの支援については国際法上、問題にはならないと整理していると考えられます。

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イギリスとスウェーデンが共同開発した携行式対戦車ミサイルNLAW(画像:サーブ)。

 このように、今回のウクライナのように「合法な武力の行使を行っている国に対して支援を行うことは国際法上、問題とはならない」という整理については、ある程度、国際的な理解が深まりつつあるといえるかもしれません。しかし、どちらが合法に武力を行使しているのかという問題は、通常は必ずしもはっきりと判断できるものではありません。

 今回のウクライナへの各国の支援は、ロシアの軍事侵攻に対して国際社会全体がほぼ一致してその違法性を明確に認識したからこそ、可能になったという側面もあるのかもしれません。

【了】

【質実剛健】ウクライナへの提供物資を搭載したC-2の荷室

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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