沈んだロシア巡洋艦「モスクワ」どんな船? 艦齢40年の老艦が艦隊旗艦を務めていたワケ
米空母機動部隊に対抗するための武器
なお、この時代の「ミサイル巡洋艦」というと、アメリカを始めとした西側では主に艦対空ミサイルを搭載した「対空ミサイル巡洋艦」を示しましたが、ソ連では、対空ミサイル巡洋艦だけでなく、艦対艦ミサイルを主兵装とする「対艦ミサイル巡洋艦」も含まれました。
実は、それまでのソ連海軍は、自らも力を入れてきた潜水艦を第一の脅威と見なしてきました。そのため、隠密裏にソ連領海へ近づく「見えない敵」たるアメリカの原子力潜水艦、特に国家滅亡をもたらす弾道ミサイル潜水艦を排除すべく、対潜能力に優れた駆逐艦や巡洋艦の整備を進めます。
そしてそれらが一応揃ったところで、ゴルシコフは、今度はいよいよ第二の脅威と見なしているアメリカ空母機動部隊を攻撃できる水上戦闘艦の本格的な整備を命じたのです。
艦上機を用いて、はるか彼方の陸地でも敵艦隊でも攻撃できるアメリカの空母機動部隊は、ブルーウォーター・ネイヴィーの象徴ともいえます。しかし当時のソ連海軍は空母を保有していなかったので、遠方の敵を攻撃できる艦上機はありません。その代わり、陸上基地から出撃する長距離爆撃隊は擁しています。
そこで、ミサイル技術の向上に力を注ぎ、艦上機の完全な代替手段にはなりえないものの、かなりの長射程を有する対艦ミサイルの開発に着手。この長射程対艦ミサイルを搭載する水上戦闘艦を、アメリカ空母機動部隊への対抗手段のひとつに組み込みました。
ちなみにソ連海軍は、水上戦闘艦に加えて潜水艦や長距離爆撃機からも長射程対艦ミサイル多数をほぼ同時に斉射して、アメリカ空母機動部隊が対応不可能になるほどの対艦ミサイルの「槍ぶすま」を見舞う、「対艦ミサイル飽和攻撃」という戦術を考案しています。
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