核は積んでいたのか 沈没の巡洋艦「モスクワ」搭載可能性とロシア“悪夢のシナリオ”

脅しで核を使用する可能性も

 今回、「モスクワ」が沈没したことに関して、筆者(白石 光:戦史研究家)の推論をいくつか述べてみようと思います。

 ひとつは、P-1000ミサイルを搭載せずに出撃した可能性です。ウクライナには水上戦闘艦がほとんどないので、対地対艦攻撃が可能な巡航ミサイルならいざ知らず、水上戦闘にしか使えない対艦ミサイルは不要という考えです。ただ、もしP-1000未搭載で出撃後に、たとえばNATOの軍事介入などが生じた場合、いったん帰港し改めて搭載する手間を考えると、あまり現実的ではないといえるでしょう。

 ふたつ目は、通常弾頭のP-1000だけを搭載していた可能性で、これは常識に基づく妥当性の高い推察といえそうです。

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スラヴァ級巡洋艦「モスクワ」が備えるP-1000「ヴルカーン」対艦ミサイルの発射機。手前の海軍歩兵と比べると巨大さがわかる(画像:NATO)。

 そして最後が、核弾頭を搭載していた可能性です。2022年2月24日にロシアがウクライナへ侵略を開始した直後の27日、ロシアのプーチン大統領は、軍に対して核戦力などの特別態勢への移行を下令しました。

 これは、「核の脅威」をちらつかせることで、アメリカやNATO(北大西洋条約機構)がウクライナ側に立って直接武力介入するのを阻止する目的を含んだ、多分に政治的メッセージの大きなものでしたが、その一環として、黒海艦隊の旗艦たる「モスクワ」に核弾頭を搭載していたとは考えられないでしょうか。前出した、一部の欧米メディアが報じている核弾頭搭載の可能性というのも、この核弾頭型P-1000ミサイルを指しています。

 今回の「核をちらつかせた脅し」は、最初に「下手に介入すれば核を使うかもよ」と脅しをかけ、次に「軍部へ核使用の対応を下令」と動いています。そこで、次の動きを推察すると、もしロシア側にとって著しく都合の悪い事態が生じた際には、3番目として「実際に脅しの1発を爆発させる」、というケースもあるのではないかと筆者は考えます。

【改名前の姿も】スラヴァ級巡洋艦「モスクワ」を上から横から

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