飛行機じゃ無理! 自衛艦の「現金輸送大作戦」 かくて沖縄はドルから円に変わった
海上自衛隊の輸送艦だった初代「おおすみ」と「しれとこ」は、かつて542億円もの現金を海上輸送する任務にあたったことがありました。もちろん厳戒態勢下、届け先は日本復帰直前の沖縄、現在の価値でおよそ1540億円を輸送する一大作戦です。
国が変わるなら通貨も切り替えなきゃ
2022年5月15日は、沖縄の本土復帰50年の節目の年です。半世紀前の1972(昭和47)年5月14日まで沖縄はアメリカの施政権下にありました。そのため沖縄諸島(琉球諸島および大東諸島)では様々なものがアメリカ式であり、経済の根幹をなす通貨(流通貨幣)もドルでやり取りされていました。
しかし、沖縄の施政権がアメリカから日本に移されるということは、すなわち通貨についても円建てになるということです。銀行の金庫の中から、個々の住民のポケットマネー、それこそ各家庭のタンス預金まで日本円に両替しなければなりませんでした。そこで、関係者は沖縄の本土復帰が具体的になるとともに、沖縄の通貨を「ドル」から「円」に切り替えるための諸準備に着手しました。
まず、沖縄諸島内にどれほどの民間資産があるか算定する必要がありました。これについては関係者の尽力によって、沖縄の人々の手持ち財産は約6000万ドルと判明します。それに法人資産や申告外の資産を加算すると、日銀(日本銀行)は1億ドル程度ではないかと試算。当時のレートは1ドル=360円(当時ニクソンショックで306円だったが、沖縄は本土復帰にあたり特例で360円計算)だったので約360億円です。
これに万一の際の予備ぶんを含めて必要金額は542億円と見積もります。そして、このうち、紙幣が517億円で約22t、硬貨が25億円で約293tとはじき出し、沖縄に運ぶべき通貨の量を合計約315tと算出しました。これは、現在の価値でおよそ1540億円になります(総務省統計局「消費者物価指数」をもとに算出)。
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