飛行機じゃ無理! 自衛艦の「現金輸送大作戦」 かくて沖縄はドルから円に変わった

無事お届けもしばらく帰れなかったワケ

 このような厳戒態勢のなか、無事、大量の現金は新設された日銀那覇支店の地下金庫に納められ、今度は離島を含む津々浦々の金融機関に向けて届けられます。しかし、輸送艦2隻は本土に帰ることなく那覇軍港に留まりました。

 なぜなら現金輸送はこれで終わりではなく、今度は円と換金されて沖縄中から集められたドルを本土に持って帰る任務が待っていたからです。

 5月15日の復帰の日以降、沖縄諸島の各地で換金が始まりましたが、数日後ドルが日銀那覇支店に集約されると、それらはまたコンテナに詰められて海自の輸送艦に積載され、ドルを持ち帰るために、再び護衛艦とP2V対潜哨戒機が警戒するなか、帰路に着きました。

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海上自衛隊のP2V対潜哨戒機(画像:海上自衛隊)。

 ちなみに現金輸送のために準備されたのは、海自の輸送艦2隻だけではありませんでした。実はこのほかに陸上自衛隊のヘリコプター3機と航空自衛隊の輸送機1機も待機しており、この現金輸送作戦は陸海空の三自衛隊をあげた防衛庁(当時)の一大任務だったのです。

 まさしく自衛隊以外にはなし得ることの難しい、前代未聞の大作戦だったといえるでしょう。

 それでは最後にひとつトリビアを。この一大輸送作戦、542億円を運ぶためにかかった輸送費は4億4000万円(当時)、そして万一のためにかけた保険金は掛け捨てで1億8000万円(同)だったそうです。

【了】

【右側走ってる!】隊列を組んで走る現金輸送トラック群 写真で見る

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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