今度のお客はウクライナ兵 「戦場のタクシー」M113装甲車 60年も重宝されるワケ
履帯式装甲車の再評価につながるか
もっとも、21世紀に入って、対テロ戦争のような不正規戦が増加して以降、先進諸国の軍隊では、履帯式装甲車に比べて戦場へ迅速に展開できる装輪(タイヤ)式装甲兵員輸送車の採用が増加しています。しかし装輪装甲車は、履帯式に比べて泥濘地や砂漠などの舗装されていない路面(不整地)の踏破能力にやや劣り、また運用する軍隊の要求に基づく装備の追加搭載能力でも、履帯式装甲車には及びません。
そのため、近年では履帯式装甲車を再評価する動きがあり、今回のロシアのウクライナ侵攻により、その気運はさらに高まる可能性があると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
そして現在。アメリカ陸軍はM113を後継する履帯式装甲車「AMPV」(Armored Multi-Purpose Vehicle)の導入を進めていますが、いまだに多くの国でM113は主力の装甲兵員輸送車として運用されています。近年ではM113をライセンス生産したトルコが、M113をベースとする無人戦闘車両「シャドウライダー」を開発するなど、新たな活用法も生まれています。
今年で制式化から62年を迎えるM113ですが、世界中でまだまだ活用されそうです。たとえば、M2 12.7mm機関銃やM1911「ガバメント」拳銃など、制式化から100年以上に渡って運用されている銃器は存在しますが、軍隊の制式装備として100年運用されている装甲車は、筆者の知る限り皆無です。M113が初めての“100年装甲車”になるのでしょうか。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
内部まで再現されたタミヤの名キット、かつて作りました。
一応水上浮行装備がありますが、実戦では機会はなかったでしょう。
マニアにかかれば、シリアスな戦争も、おもしろ乗り物ニュースになるのか…。
なんとも言えない。
いくらなんでも、「今度のお客はウクライナ兵」はないだろう。