登場から30周年を迎える西武鉄道6000系 初の地下鉄直通車 違いもいろいろ

西武鉄道では、地下鉄有楽町線や地下鉄副都心線との乗り入れを行っています。この乗り入れ列車の主力として活躍しているのが6000系で、1992年に登場してから今年でちょうど30年を迎えます。6000系でも登場当時から車体に違いがあるほか、登場から30年の間に細かな改造を繰りした結果、車両によって個性があるのです。

この記事の目次

・西武鉄道6000系って、どんな電車?
・ステンレス車体VSアルミ車体
・地下鉄有楽町線に進出したいけど?
・地下鉄副都心線乗り入れで「白い顔」に
・車内に付く「液晶モニタ」
・3種類に増えたVVVFインバータ
・銀色の顔で残る新宿線の6000系
・地味な改造が続く6000系 LED化

【画像枚数】全25枚

西武鉄道6000系って、どんな電車?

 西武鉄道6000系は地下鉄有楽町線への乗り入れに合わせて1992(平成4)年に登場した車両で、外観や搭載機器などを一新、従来の西武の車両とは大きく変わっています。

まずは外観ですが、地下鉄線内での異常時に備え、前面に貫通扉を備えています。この貫通扉を端に寄せ、運転士側の窓を大きくしたデザインに特徴があります。

Large 220423 seibu 01

拡大画像

西武新宿線を行く6000系の第1編成(6001編成)。地下鉄有楽町線との相互直通運転用として1992年に登場。西武鉄道初のステンレス車両となった(2021年4月16日、伊藤真悟撮影)。

 当初はステンレスの車体を採用しました。西武鉄道の車両でステンレス製の車体としたのは6000系が最初です。6000系では銀色が目立つ車体となり、窓の上下に青のラインをとしたのも特色で、西武鉄道では6000系が最初にこの車体色となりました。先頭部は、「く」の字形に傾斜したスタイルとなっていて、この部分はFRP(繊維強化プラスチック)で作られています。

 6000系が登場した頃、西武鉄道の電車は黄色をベースにした色に塗られた車両ばかりで、特急「レッドアロー」や4000系などで例外がある程度でした。そのため、6000系は従来の西武鉄道の通勤電車のイメージを覆す車両でもあったのです。

Large 220423 seibu 02

拡大画像

池袋線で使用されていた頃の6000系6001編成(1996年10月12日、伊藤真悟撮影)。

 車内では、座席の色が青色となり、以後の車両にも引き継がれています。厳密には、優先席の座席の色が違っていたり、青系でも模様の色彩が違っていたりしますが、6000系の影響が大きかったのかもしれません。なお、6000系の増備過程で座席がバケットシートになり、座る場所が明確になった上、座り心地が良くなっています。

Large 220423 seibu 03

拡大画像

モハ6256の客室内。車体側面の帯色とあわせるように座席の色も青となった。着席区分を現わす背ずり部のストライプは、1次車では奇数号車が白、偶数号車が赤としていたが、2次車以降では白を採用。のちに1次車も白に統一された(2019年6月1日、柴田東吾撮影)。

 走行機器も一新しています。西武鉄道では101系を使って試験が行われていたVVVFインバータ制御を本格的に採用。冷房装置や照明などに電力を供給する補助電源装置も半導体を使った静止形となり、摩耗する部分が少なく、メンテナンス作業を軽減する構造を取り入れています。

さらに台車も一新して、ボルスタレス台車を本格的に導入しています。軸箱支持方式は緩衝ゴム式で、車軸の上はコイルばねで支える一方、車軸の両脇をゴムで挟むというものです。「ニューレッドアロー」の10000系の台車にも緩衝ゴム式の軸箱支持方式が採用されていますが、6000系で採用された緩衝ゴム式のボルスタレス台車は比較的珍しいものなのかもしれません。

ステンレス車体VSアルミ車体

 さて、6000系では製造過程でメーカー(製造所)が変わります。6000系は当初、東急車輛(現在の総合車両製作所横浜事業所)で作られていましたが、1996(平成8)年の製造分から日立製作所に変更します。

 この際、車体の材質が大きく変わり、ステンレス製からアルミ製に変わったのです。アルミ製の6000系は50番台となり、先頭部もFRPをやめてアルミで造られています。また、アルミ車体となったことで塗装が行われ、無塗装だった側面の銀色の部分は灰色に塗られています。ただし、前面は当初、銀色に塗られていました。

Large 220423 seibu 04

拡大画像

アルミ車体となった6000系50番台。写真は西武球場でのオールスター戦開催を記念して松坂投手のヘッドマークを取り付けた6053編成で、副都心線対応改造前の姿(1999年7月24日、伊藤真悟撮影)。

 6000系は1999(平成11)年まで7次に渡って製造され、10両編成25本が作られました。このうち17本が東急車輛製のステンレス車、50番台の8本が日立製作所のアルミ車となっています。

 製造別では、ステンレス車が1~4次車、アルミ車が5~7次車に分かれています。アルミ車の中でも仕様変更が行われ、1998(平成10)年に登場した6次車の6056編成から車体や台車に変更を加えています。

Large 220423 seibu 05

拡大画像

6次車からは戸袋窓を廃止し、モノリンク式のボルスタレス台車を採用した。写真は7次車の6058編成(画像:写真AC)。

 車体では、側面にあった戸袋窓を廃止したほか、台車では軸箱支持方式が変更され、モノリンク式を採用しています。このモノリンク式のボルスタレス台車は、私鉄各社で広く採用されている台車です。西武鉄道でも以後に登場した車両にも採用され、001系「Laview(ラビュー)」が例外となる程度です。

Large 220423 seibu 24
西武鉄道の前身である武蔵野鉄道が開業して100周年を記念して6057編成にラッピングを施した「黄色い6000系」(2015年4月17日、恵 知仁撮影)。

地下鉄有楽町線に進出したいけど?

残り3129文字

この続きは有料会員登録をすると読むことができます。

2週間無料で登録する

Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。

テーマ特集「【鉄道特集】往年の名車、活躍中のエース どんな車両? 国鉄時代の思い出も」へ

最新記事