ロシア戦車なぜ「丸太」を積んでいるのか 意外と万能アイテム ウクライナでどう使う?
丸太は防御力強化にも
このように泥濘地脱出のために用いられる丸太ですが、その一方で違う使い方をする場合もあります。それが防弾です。
さすがに貫徹力が格段に強力な戦車の徹甲弾は防ぐことができませんが、りゅう弾などなら「ないよりマシ」程度の防護性能はもっています。この他、重機関銃の弾でも「ないよりマシ」です。
この「ないよりマシ」ですが、兵士たちからすると、案外あるとないとでは精神的に大きな差があるようです。なぜなら、「装甲板ほどの安心感はないが、もしかしたら直撃は避けられるかもしれない」という気持ちの面で大きな要素になったりするからです。
ただでさえ危険な戦場ですから、藁にもすがるほど助かりたいというのは誰しもが考えます。つまり、丸太は戦場における「お守り」という側面もあるのでしょう。
一方で、この丸太が有効な防弾板になることもあります。それは口径の小さい小銃弾や拳銃弾、そして迫撃砲や榴弾砲などから発射される曵火射撃の場合です。
曵火射撃とは、地上数十mの高さで砲弾を空中炸裂する射撃方法のことで、おおむね握りこぶし程度の大きさの砲弾の破片を広範囲に飛び散らせ、面制圧する時などに用いる射撃方法です。
もちろん、撃ち込まれる砲弾の数が多いと丸太は破壊されてしまいますが、1~2発程度なら丸太でも耐えられる、あるいは人員への直撃は回避できるでしょう。そのためか、今回のウクライナ侵攻に参加したロシア軍トラックのなかには、ルーフ上に丸太を敷き詰めている車体も確認できました。
このように、戦場で丸太は重宝されるのです。その防護性能は微々たる物ですが、現場の兵士たちの士気を少しでも向上させ、本来の目的である泥濘地からの脱出という点でみれば、立派な装備品のひとつと言えるでしょう。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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