「反自衛隊」県民感情は半世紀でどう変わった? 元陸自トップが語る沖縄の重要性
沖縄における自衛隊イメージの変わりよう
――沖縄県内からの入隊者はこの50年で通算1万人近くにまでなりました。また郷土部隊である第15旅団の県内出身者は現在、全体の4割ほどにまでなったといいます。この点はどう捉えられますか。
自衛隊が沖縄に配置された直後から、本土では「自衛隊派兵反対」、沖縄では「人殺し! 自衛隊帰れ」といった内容で度々行われてきた抗議デモは、年を経るごとに徐々に減っていき、復興は著しく進みました。2010(平成22)年3月、陸幕長として沖縄を訪れた時の沖縄の変わり様には目を見張るものがありました。
今では反米軍を叫ぶ人こそいるものの、反自衛隊を前面に出して叫ぶ人はほとんどいなくなっているようです。これは、まさに自衛隊が沖縄に定着した証左だといえるでしょう。
当時、隊員には沖縄出身者もいましたが、中には親戚に対して自衛隊に入隊していることを隠しているというものもいました。自衛隊に入隊したことがバレると親戚中の恥といわれるので隠していますという隊員のハナシも聞いたことがあります。
それが、半世紀の間に大きく変わったのです。復帰直後の沖縄では、今まで自衛隊や自衛官に接したこともなければ、同じ軍隊的組織という意味から旧日本軍とダブらせたり、また戦後27年間にわたる米軍統治の負のイメージから、自衛隊にあまり良い印象を抱かない県民が多かったのも事実です。
しかし、沖縄所在の自衛官らによる真摯な活動、具体的には急患空輸や、不発弾処理など沖縄県に対するひたむきな貢献により、県民に「自衛隊は頼りになる」というイメージが浸透したことで、自衛官に対する気持ちが溶解していったものと考えます。
それが自衛隊内における沖縄出身者の増加につながったのだと思います。大変すばらしいことであり、今後、ますます入隊者が増加し郷土の守りは自分たちの手で、と考える若者が増えることを願っています。
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