希代の不人気旅客機「メルキュール」が全ッ然売れなかったワケ 仏版「737」実は高スペック?

フランスには、打倒ボーイング737を目指して開発された旅客機、ダッソー社製の「メルキュール」があります。12機のみ製造とヒット機とは程遠かったものの、実は決して低スペックではありませんでした。

なぜ「メルキュール」はここまで売れなかったのか?

「メルキュール」が売れなかった原因としては、1970年代のオイル・ショックによる新型のジェット旅客機の需要の冷え込みもありましたが、決定的だったのは欧州域内の運航を前提とし、2000km弱に抑えられていた航続距離にあったとも。エアライン側の興味が、同じ位の大きさで、短距離路線にも、アメリカ大陸横断路線といったより航続距離が長い中距離路線にも投入できるような機体に向いてしまったため、といわれています。製造機数は、量産されたジェット旅客機のなかでも最少クラスとなる、わずか12機でした。

Large 20220528 01
ルフトハンザ航空のボーイング737(画像:ルフトハンザ航空)。

 ただし、ダッソー社の「メルキュール」はいくつか、民間ジェット旅客機のマイル・ストーンを飾っている機体であるのも事実です。先述した先進的な計器着陸装置「ILS カテゴリーIIIA」を装備して初めてFAA(アメリカ連邦航空局)の型式証明を取得したこともそうですし、初めて女性のみによる運航を実施した、といった記録もあります。

 なお、フランス語の「メルキュール」と言う名称は、ローマ神話における商人や旅人の守護神の名前で「水星」を意味します。この守護神、頭にヘルメットとその足にエルロンを持ち、英語では「マーキュリー」とも呼ばれます。名付け親はダッソー社の社長であるマルセル・ダッソー氏なのだそうです。ちなみに、ダッソー社によると同型機は「無事故で4400万人の乗客を乗せ、44万回の飛行を行った」とのことです。

 ちなみに「メルキュール」はヒット作とはなりませんでしたが、その後、ダッソー社と同郷であるフランスの航空機メーカー、エアバス社のA320が737の牙城を切り崩すことになります。「メルキュール」とA320、そのルックスはまさに瓜二つ。「メルキュール」の開発にあたった技術者が、エアバスA320の開発にも携わり、ライバルに“倍返し”したのかもしれません。

【了】

【写真特集】見ればみるほどA320? 「メルキュール」の実機に肉薄! (11枚)

Writer:

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス