鶴橋名物「日本一小さなファミマ」閉店 徐々に消えるホーム上の売店&コンビニ

売店→コンビニ化で盛り返した近鉄の“駅ナカ店舗”

 昭和末期まで主流であった「キヨスク」など駅売店の主力商品は、スポーツ新聞、ガム、缶コーヒーなど、通勤中のサラリーマンに向けたラインナップでした。JANコート(バーコード)も電子マネーもなかった当時、全ての商品と価格を暗記して乗客をさばく店員さんの“職人技”によって店が成り立っていたと言えるでしょう。

 しかし多様な乗客に支持されるべく、鉄道会社は各社とも“コンビニ化”への舵を切っていきます。

 2000年代以降、近鉄の売店事業も年3%程度の売り上げ減少に悩まされ、2005(平成17)年頃から自社の売店を「K-PLAT」「Pochet plat(ポケットプラット)」へ転換。近鉄は、もともと系列会社にコンビニチェーン「am/pm」のフランチャイズ展開を行う「エーエム・ピーエム近鉄」があり、駅構内や駅近でコンビニを展開していたノウハウもあってか、約60店舗の転換を一気に進めることができました。この転換は目に見えた成果を挙げ、店によっては日販(1日の売り上げ)6割もアップしたそうです。

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閉店告知(宮武和多哉撮影)。

その後、2013(平成25)年3月には上記2ブランド約60店を運営する「近鉄リテーリング」がファミリーマートのFCに加盟、その際に鶴橋駅ホーム東店も売店スタイルの「Pochet plat」から転換し、「日本で一番小さなファミリーマート」を掲げることになりました。

なお前述の「am/pm」も2010(平成22)年にファミリーマートへ合併され、近鉄の駅構内店舗を含む全店の転換が1年ほどで完了しました。つまり近鉄の駅構内にあった複数ブランドのコンビニ・売店は、複数のルートでファミリーマートへ合流したことになります。

ホーム上のコンビニのライバルは「同じ駅の同系列店」?

 このような鉄道コンビニの大手チェーン化は、他の鉄道会社でも同様です。広い駅構内に数店が展開される場合もあり、例えば鶴橋駅では閉店する「1番ホーム東店」のほか、「1番ホーム西店」「3番ホーム西店」「東3階店」など複数のファミリーマートが存在。いずれも“日本一小さい” 1番ホーム東店より商品が揃っています。

 また1番ホーム東店の手前側には「アーバンライナー」「しまかぜ」などの特急券販売窓口があり、かつては行列ができるほど賑わっていました。しかし現在はチケットレス乗車が浸透、かつ近年ではコロナ禍で乗客の減少・運転本数の3割削減など、近鉄特急そのものにとって厳しい状況が続き、以前ほどこの場所に人が滞留しなくなっていたことも、閉店の一因と言えるかもしれません。

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近鉄難波駅1番ホームのファミリーマートも2022年3月末で閉店した(宮武和多哉撮影)。

 なお、近鉄独自ブランドからファミリーマートに転換した店舗の中でも、近鉄名古屋(4番ホーム)、大阪難波駅(1番ホーム)など、ホーム上の店舗の閉店が相次いでいます。

【了】

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Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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