聖ジャベリン様も払底の危機か どの国も陥りかねない現代戦の思わぬ「落とし穴」

武器生産を国内のみで完結できなくなったロシアの陥った罠

 ロシア側でも高価な「弾が無い」事情は同じようです。兵器を国産できる産業力はありますが、サプライチェーンはやはり複雑で、西側からの輸入もあります。

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露エルビス社の32ビットプロセッサー。メインコアはイギリスのARMCortex-A9。ロシア製半導体の多くは輸入品のリパッケージ品(画像:ロステック)。

 4か月もの正規軍同士の長期戦は、どの国もそうでしょうが、ロシア自身も想定していなかったと見え、そうしたなか特に半導体について、これまでロシアは国産化に失敗し供給は台湾のTSMCなどからの輸入に頼ってきており、経済制裁でその不足が深刻になっています。ロシアの戦車メーカーであるウラルヴァゴンザヴォートはサプライチェーンが不安定となり、生産ラインが停止しているようです。

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ウラルヴァゴンザヴォートの戦車工場を訪れたプーチン大統領(画像:ロシア大統領府)。

 この紛争はロシアとウクライナのどちらが先に兵器在庫が払底するかの、持久戦の様相を呈しつつあります。現代戦を決する複雑高価精緻で強力な兵器は「たまに撃つ 弾が無いのが玉に瑕」状態なのはどの国も同様で、長期持久戦など想定していなかったようです。

 しかしどちらかの兵器の在庫が払底したとしても、それで停戦に至るとは思えません。どちらかが戦争目的を達したと判断するまで、20世紀のレガシーな兵器を手に20世紀型の戦闘へ移行していくだけに思えます。持久戦に決着を付けようと大量破壊兵器を「たまに撃つ」という事態となれば、それこそ川柳ではすみません。

【了】

【写真】対戦車ミサイル「ジャベリン」の製造ライン

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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