「橋があってもフェリー盛況」のナゼ 神戸~高松ジャンボフェリー 新造船は“救世主”?

32年ぶりとなる新造船が進水した神戸~高松間の「ジャンボフェリー」。明石海峡大橋と並行する同航路は一時低迷しましたが、いまはむしろ、トラックドライバーにとって、なくてはならない存在になりつつあります。

顧客をつかんできたジャンボフェリーの戦術

 特に四国のトラック事業者は、生産年齢人口の減少に併せてトラックドライバーの人手不足が顕在に。すでに四国から神戸港までの陸上輸送のための人員確保が困難になっている状況に陥っています。2005年には四国だけで約5万人いたトラック運転者は、2030年には3万4000人まで減少すると予想され、国土交通省港湾局は「輸送の生産性が変わらなければ、トラックドライバー不足は深刻化し、輸送需要に対応できなくなる」と危機感を募らせます。

 こうした状況の中、トラックごとに人員を手配する必要がある陸上輸送から、トレーラーシャーシ(車台+コンテナ)とフェリーを活用して大量の荷物を輸送する海上輸送に切り替える荷主が増えています。

 ジャンボフェリーは自社で輸送案件を直接引き受けるドア・ツー・ドアの一貫輸送に積極的に取り組んでいます。これは陸送とフェリーによる無人航送(シャーシ輸送)を組み合わせ、車両リレー方式で貨物を目的地に届けるもので、クループ全体の車両を活用した輸送サービスとなっています。

 同社はアルミウィングシャーシ、平シャーシ、まな板シャーシ、40F(フィート)シャーシ、20Fシャーシなど300本以上を保有。神戸港、高松港、そしてフェリー船内に220Vと440Vの電源設備を完備しました。

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ジャンボフェリー「こんぴら2」。甲板にはコンテナが多く積まれる(深水千翔撮影)。

 無人航送を行うメリットとして、少ない人数で大量の貨物を運べることがあげられます。無人のシャーシはフェリーに乗せて長距離を輸送する一方、ドライバーはフェリーの寄港地と集配先との間の短い距離を往復するだけで済むため、これまでトラックの台数と輸送距離ごとに増加していた人件費とコストを削減できます。

 国土交通省の資料によると、神戸~高松間のトラック輸送台数は、2011年は7万2000台(このうち国際フィーダーコンテナ約3万5000TEU)だったのが、2018年には9万2000台(同約5万7000TEU)まで増加。この“トラック”のうち約7割が無人航送のシャーシです。小豆島(坂手港)の利用がメインのバスや乗用車を含めると、年間輸送台数は16万7000台にも達します。

“積み残し”解消なるか

 一方で近年、フェリーが満船のため乗船できない車両が増加。2018年の実績では高松港発で707台、神戸港発で285台の積み残しがありました。

 特に両港を午前1時に出発する第1便と、午前0時に到着する第4便の積み残しが顕著。これは、早朝の市場や工場などの始業開始までに貨物到着を求める荷主や、神戸港コンテナターミナルへの貨物搬入を求める荷主のニーズだとされています。

 こうした事情からジャンボフェリーの大型化が求められ、それが5200総トン型の新造フェリー「あおい」の建造に繋がりました。

「トラックについては現在の1.3倍の台数を積載できる大きさになった。ドライバーが非常に不足している時代なので、フェリーによって無人航送で貨物が輸送できる点は、運送業界、物流業界の皆様にも期待していただける内容だと思っている」(ジャンボフェリー 山神社長)

もう1隻の更新はしばらくお預け さらに大きく!?

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「こんぴら2」は「ニャンコフェリー」になっている(深水千翔撮影)。

「あおい」の就航後、1989年に竣工した「こんぴら2」は引退します。ジャンボフェリーではもう1隻の「りつりん2」(1990年竣工)の後継船も計画していますが、こちらの就航は2025年以降になりそうです。

 それというのも高松港では現在、トラックの海上輸送需要の増加に対応するため、大型フェリーに対応した新岸壁と輸送ターミナルの整備が2025年度までの計画で進められているからです。神戸港でも新港第3・第4突堤間の埋め立て工事が行われており、こちらは宮崎カーフェリーやジャンボフェリーに積載するシャーシ置き場にも活用される予定です。このため新造船の建造については、港側の整備とセットで行う必要があります。

 山神社長は無人航送の増加を念頭に置いた上で「2025年までに建造する2番船は『あおい』と同型だが、規模は少し大きくなる予定」と述べています。

 明石海峡大橋の開通前は4社6隻15便体制で運航していた神戸~高松航路を運航する船社は、今やジャンボフェリー1社のみとなりました。しかしCO2(二酸化炭素)の削減やドライバーの負担軽減という観点から海上輸送が見直されています。新時代の本四航路の担い手としてフェリー「あおい」の活躍が期待されます。

【了】

【どんな船に?】新造船の船内設備 画像で見る

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

2件のコメント

  1. 記事は大変興味深く読まさせて頂きました。一点気になった語句がありましたので僭越ながらお知らせ致します。「航走」は「航送」よろしいと考えます。

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

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