戦車の主砲大型化ふたたび? 対ロシアで求められる能力向上 独新型戦車の130mm砲より大きく?
「レオパルト2+別の砲塔」も出展 独仏タッグのライバル
MGCSの開発はラインメタルのライバルであるドイツの防衛企業KMW(クラウス・マッファイ・ヴェクマン)と、フランスの防衛企業ネクスターの合弁企業であるKMWネクスター・ディフェンス・システムズ(以下KMWネクスター)が担当しています。
同社はレオパルト2の車体にルクレールの砲塔を組み合わせた技術実証車両の「EMBT」(Enhanced Main Battle Tank)を、2018年に開催された前回のユーロサトリで発表しており、今回のユーロサトリでもEMBTの改良型を発表しています。
今回出展されたEMBT改良型のコンセプト模型は、砲塔の形状がフューチャー・ガン・システムとは異なっています。同社の担当者は「フューチャー・ガン・システムはEMBTの兵装の選択肢の一つではあるが、現時点で採用するかはまったく決まっていない」とも述べています。
本命は140mm砲か
EMBTへのフューチャー・ガン・システムの採用が不透明な理由の一つは、ネクスターが自社資金で開発を進めている140mm滑腔砲「ASCALON」の存在もあると筆者は思います。
前に述べたように、主砲を大口径化するには、砲弾の大型化に伴う搭載砲弾数の減少という問題があります。KF51は新開発の砲弾自動装填装置の中に20発、砲塔内に10発の砲弾を搭載できますが、レオパルト2の42発に比べて搭載数は大幅な減少を余儀なくされています。
これに対しASCALONは、弾頭を薬莢の底まで埋め込んだテレスコープ弾を使用することで、全長を1300mm(1.3m)にまで抑えており、砲の大口径化に伴う搭載砲弾数の減少という問題をある程度解決しています。
また、ネクスターが開発を進めている120mm精密誘導滑腔砲弾「120 N-LOS」と共通の技術を用いる精密誘導砲弾の開発も構想されており、この点でもフューチャー・ガン・システムより、先進的と言えます。
EMBTが主砲にKF51と同じ130mm滑腔砲を採用するのか、ASCALONをベースとする140mm滑腔砲を採用するのかを、現時点で予測するのは困難です。しかし2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、ヨーロッパ諸国ではロシアの脅威に対抗するため戦車の能力向上が必要であるとの声が大きくなっています。ロシアの戦車戦力の強化の推移によっては、EMBTの主砲が140mm滑腔砲になる可能性は十分にあると筆者は思います。
【了】
※一部修正しました(6月30日10時21分)。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
主砲の長方針化
↑これ誤字だと思います
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
駆逐艦の主砲が5インチつまり12.7cmであることを考えると、ついに戦車が軍艦の主砲を超える時代が来たのかと思う。
いや、まぁ軍縮条約ギリギリの12.7だけじゃなくて日本の長10cm砲とかイタリアの120mm砲とかあるけどね
>>全長を130mm(1.3m)にまで
全長が130mmならば、13cmです。
ラインメタル MK.20 Rh 202で使われているNATO規格の20mm口径弾の全長が139mmなのでこれよりも9mmも短い戦車砲弾とは画期的ですね。
1.3mであれば、現行のNATO120×570mm戦車砲弾の倍以上の長さになりますね。
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
大口径でも、当たらないなら意味はない。観測機能の向上のほうが有効だと思います。
取材と記事ありがとうございます。