ヤマハ「電動キックボード対抗馬」市販直前モデル登場 発表から5年 新モビリティどう売る?

展示したのが「イベント総合EXPO」だったワケ

 潮目が変わったのは2022年2月。新中期経営計画(2022~2024年)が発表され、トリタウンが「新規事業のモビリティ新領域」と位置付けられたからです。トリタウンはここで初めて表舞台に。2023年中にグローバル市場で投入されることが目標として掲げられました。

 では、日本国内での市場投入はどうなるのか。今回トリタウンが展示された場所が、ヤマハの姿勢を端的に示しています。

「イベント総合EXPO」の来場者は、イベント主催者、企画会社、レジャー・商業施設、自治体等の関係者です。足を止める来場者の多くは、トリタウンを初めて目にしていたはず。

 トリタウンや電動キックボードなどの新しいパーソナルモビリティは、都市部でのシェアリングで知られていますが、視点を遊園地などの商業施設関係者に移すと、利用者が広大な敷地を快適に回れる移動手段として注目されているのです。

 ただ、期待先行で交通環境委整備が追い付いていない側面は否定できません。電動キックボードなどの新モビリティをめぐっては、2022年4月に改正道路交通法が国会で成立し、一定の条件で歩道も走行可能になるなど、現在の交通ルールより簡単に利用できるようになると目されています。しかし、その実行は2024年頃になりそうなうえ、詳細な車両規定も未定です。

 ヤマハは、こうした国内事情をにらみ、まずはレジャー施設などでの市場投入を考えました。トリタウンの市場投入を担当するヤマハのPLEV事業推進部 桂雅彦主務はこう話します。

「このトリタウンは、歩いている人と同じ極低速でも安定して移動でき、乗ったまま停止することも可能です。乗って楽しいだけでなく、こうした特徴を活かして空港、工場など施設の巡回警備などにも活用できます」

Large 220630 tri 02

拡大画像

イベント総合EXPOに出展された市販直前モデル。前2輪機構の部材強化などがなされている(中島みなみ撮影)。

 トリタウンはミニサイクルと同じ14インチタイヤを採用。電動キックボードよりも大きな車輪は、走行安定性がアップするだけでなく、立ち乗り乗車で目線が約20cmも高くなり快適です。この眺めの良さが、ビジネス利用にも役立つというわけです。

「イベント総合EXPO」は7月1日まで。会場で運転はできませんが、この眺めの良さを実証実験車で体験することが可能です。

【了】

【これが「市販直前モデル」】立ち乗り3輪「トリタウン」 写真で見る

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。