元・日本最長の路線バス「名金線」最後の県境越え区間が消滅 10時間かかった路線の今
高速バスや観光バス、競合バス路線に役目が置き換わった?
かつての名金急行線が果たした都市間輸送や観光地輸送の役割は、名鉄バス名古屋~高山線などの高速バスに引き継がれています。飛騨山脈を貫く東海北陸道が2008(平成20)年に全通したことで、白川郷の入口にあるバスターミナルはすっかり一大拠点と化し、名金急行線が担ってきた名古屋・金沢からの輸送のみならず、東京、大阪、富山、高山からのバスが発着するようになりました。
かたや高速道路の開通によるルート変更で、美濃白鳥駅~白川郷間のバスは順次消滅。現在では岐阜バス、白鳥交通などの路線を乗り継ぎ、途切れた区間を10km以上歩かないと連絡できなくなっています。その中でも、かつて国鉄線のきっぷ発券などを行っていた「自動車駅」である牧戸駅の駅舎は、2020年に建て替えられたものの健在。建物の中では名金急行線が現役であった頃の写真を展示したり、空きスペースに往時の発券窓口を再現(人が入れない構造になっている)したりするなど、その面影を伺うことができます。
富山県側から白川郷を結ぶバス路線は、北陸新幹線金沢延伸の前年にあたる2014(平成26)年、高岡駅・新高岡駅から城端まで高速道路を経由する観光路線バス「世界遺産バス」にリニューアルされました。城端~白川郷間のルートは大半がもともとの路線バスと変わりなく、車内で「こきりこ節」などの民謡を流す観光向けの路線にもかかわらず、沿線の人々の利用もちらほらと見られます。
そして今回、区間短縮が実施された福光~金沢間では、北陸新幹線の開業に合わせて加越能バスの南砺金沢線が開業しました。JRバス名金線は国道359号を経由するのに対して、こちらは県道金沢井波線を走り、JRバスで73分だった福光駅~金沢駅間を55分に短縮。コロナ前は、3年間で乗車実績が2.6万人から3.6万人に上昇するほど好調を保っていました。
今回のJRバス名金線の短縮は、この「もうひとつの県境越え路線バス」に需要が移ったことも大きいのではないでしょうか。なお西日本ジェイアールバスでは、7月1日ダイヤ改正で名金線以外も含め、金沢エリアの一般路線を大幅に整理しています。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
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