海をゆく原発、30年無補給で航行の船… 造船業界「原子力」に熱視線 国際競争は始まっている

船に搭載すれば30年無補給&ゼロエミ!?

 コア・パワーでは高純度低濃縮ウラン(HALEU)に対応した溶融塩高速炉や、超小型原子炉であるマイクロヒートパイプリアクターの研究開発を進めており、2026年以降にアメリカで実証運転を行うことを計画しています。

 また、コア・パワーはMSRを動力源としてモーターで推進する原子力電動船についても提案しています。

 2万TEU型の超大型コンテナ船をモデルケースとした場合、速力30ノット(約55.6km/h)以上の高速で、30年間にわたって燃料補給なしにゼロエミッションで運用することができるとしています。常時、高速航行ができるため、太平洋横断航路は6日程度で、アジア~欧州航路はスエズ運河を経由しなくても22日で目的地に着ける計算です。

 また、推進器も船の電動化に伴って形状や配置が変化することで、従来のディーゼル船にあった燃料タンクや大きなファンネルが必要なくなるため、貨物の積載量も増やせるといいます。船型はコンテナ船だけでなくバルカーやLNG船も考えているとのことです。

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シーボーグとサムスン重工が開発中の浮体式原子力発電所(画像:シーボーグテクノロジー)。

 2022年4月7日にはデンマークの原子力関連スタートアップ、シーボーグテクノロジーが韓国の造船大手サムスン重工業と手を組み、MSR発電バージ(はしけ船)の開発を行うと発表しました。シーボーグはMSRを、クリーンで安全な電力を供給するための理想的な電源と位置付けており、欧州連合(EU)からの助成を受けてバージ型原発の実現に向け取り組んでいます。またサムスン重工製はMSRだけでなく、水素プラントやアンモニアプラントの製造も手掛けます。

 4月26日にはノルウェーの造船会社ウルスタインがMSRを搭載する補給・研究・救助船「ULSTEIN THOR」と、同船から電気を充電して運航するバッテリー駆動のクルーズ船「ULSTEIN SIF」を発表。「THOR」は同時に4隻の船に給電が行える移動式の充電ステーションで、温室効果ガスを排出しないゼロエミッションのクルーズを実現するとしています。「THOR」は燃料補給が不要なことから、広大な海域で救助活動や調査活動を担うことも期待されているそうです。

 夢物語ではなく、MSRと共に着実に開発が進む浮体式の原子力発電所。この分野でも国際間の競争が静かに始まっています。

【了】

【原発、だけじゃない】海に浮かぶ「複合クリーンエネルギー工場」のイメージ 画像で見る

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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2件のコメント

  1. もし「20キロ以内立入禁止」級のトラブルに見舞われたら沖合20キロのところまで漕ぎ出してゆくことで陸地に帰宅困難地域を創らないようにする、というコンセプトなのでしょうか

  2. で、そういう原子炉の燃料は、核拡散禁止条約の対象で、核保有国じゃ無いと管理できんのだがな。
    世界は技術だけで廻っていないのだよ。