「21世紀のコンコルド」設計変更ナゼ? “胴体太らせて効率UP理論”とは ジャンボ747に先例
「エリア・ルール」実は大ヒット機誕生にもつながっていた?
ボーイング747といえば、前方のみが膨らんだ2階建ての胴体設計が特徴です。これは、当初アメリカ空軍のC-5設計案でロッキード社に敗れたボーイング社が、その設計を転用し大型旅客機を作ろうと思い立ったのが起源です。
747は、将来、貨物輸送機として使用することを前提とし、機首から長物を搭載することができるように操縦席を胴体上部へ配置しました。というのも、その頃はすぐにSSTの時代が来ると信じられていたため、最初のうちだけ旅客機として使用し、貨物機に改造する腹積もりだったのです。つまり、最初は「エリア・ルール」については、度外視されていたといえるでしょう。
これが大きく変わったのが「747SP」です。747が旅客機として好調なスタートを切ったことをうけ、航続距離を延長すべく胴体を短縮して、その分の重量を燃料搭載量に振り替えた派生型として開発されました。しかし、「エリア・ルール」を適用したことで当初の目論見以上に機体全体の飛行中の抵抗が減少し、燃料消費量も減ったのです。
この機は胴体全体を短縮したものの、2階席の長さはほぼそのまま。つまり、2階席最後部と主翼付け根のあいだにある1階席部分が”寸詰まり“になったぶん、輪切り面積が従来機よりなめらかになったのです。
ここから、747の改良案として、2階全体を尾部まで拡張するのではなく、747SPの比率をベースに、全長を初期タイプの長さに戻すことも検討されます。そして747-300が開発され、その形状は大ヒット機「747-400」へ引き継がれました。この形状は、それ以降の747にも採用されているように、良好な結果だったのでしょう。
ちなみに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のSST研究模型にも「エリア・ルール」を採用しているかに見えるものもあり、もしかすると今後の旅客機開発では、「ほっそりしすぎない超音速旅客機」がトレンドとなるかもしれません。先述したオーバーチュアの初飛行は2024年を予定しているとのこと。筆者も生きているうちに、一度は超音速飛行を体験したいものです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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