なんか変! カリフォルニアに1機のみ現存の激レアA-10攻撃機 試作で終わった残念なワケ

ふたり乗りA-10の開発が中止になった原因

 完成したN/AW A-10は1979(昭和54)年10月23日からカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で飛行試験が行なわれました。同じ年の12月4日に飛行試験が終了するまで28回のミッションで約48時間を飛行、そのうち3分の1は夜間に行われたそうです。

 こうして飛行試験の結果は成功とされ、このN/AW A-10は一定の評価を得ることができました。しかし、最終的にアメリカ空軍はこの複座型A-10の開発計画を中止する判断を下しました。

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編隊飛行するアメリカ空軍のA-10C攻撃機(画像:アメリカ空軍)。

 計画中止の理由はN/AW A-10の能力不足ではなく、より効率的に戦闘機へ全天候性能を追加できる装備が開発中だったから。それがポッド式の照準・航法支援装置です。これらは既存の戦闘機に搭載することが可能で、攻撃機としての能力を飛躍的に向上させるだけでなく、外付けゆえに新しい機体を開発するよりもコストパフォーマンスが良いという利点を持っていました。

 これらは後にAN/AAQ-13航法ポッドとAN/AAQ-14照準ポッドを組み合わせた「LANTIRN(ランターン)」の名前で実用化されたほか、さらにその後継ポッドへと改良発展していき、いまでは軍用機の定番装備にまでなっています。

 こうして、N/AW A-10は以後、飛ぶことはなくなりました。しかし、名称だけは更新され、N/AW A-10からA-10Bに改められています。ゆえに、その後A型の改良型として登場し、2022年現在、現役で運用されているA-10がC型なのは、この実用化されなかったB型があったからです。

 世界で唯一の複座型A-10(N/AW A-10)は、現在テストが行われたエドワーズ空軍基地の中にある博物館に展示されています。展示機のため飛行できない状態ではあるものの、コックピット周りのちょっと変わった形状が醸し出す異様さは、いまでも感じることができます。

【了】

【写真】前から見るとフツー、横から見ると違和感MAXなA-10B攻撃機

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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コメント

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3件のコメント

  1. あくまでも陸軍への近接支援が目的なので手柄は陸軍のものという扱いになり、空軍としては面白くない機種なんですよね
    運用方法が第二次世界大戦時のJu-87と同じなんですよね、当時は無限の射程距離を持った大砲扱いでしたが、今日でも近接航空支援は、無限の射程距離を持つ大口径砲と同じ扱いなのでしょうね。

  2. 空自で航空機整備(主にF-4)を17年ほどしていた者です。複座型が1機しか製造されなかった理由について知れる記事(タイトルもそう思える)かと期待して拝読しましたが、わかりませんでした。・・・残念。

    • 1機作って検証してるうちに
      「専用装備と技師載せるより新開発の機械載せたほうがええ」
      という結論に至ったから検証機1機で終わり

      という話じゃないんです?