ボーイング777の次「717」ですって? 命名法則ガン無視旅客機が飛ぶまでの波乱万丈

元祖「717」と現「717」、それぞれどんなもの?

 実はボーイング717とされる飛行機は、現在「717」とされているジェット旅客機のほか、もうひとつあるという説があります。それは、アメリカ空軍の世界戦略の一端を支えた「KC-135」。ボーイング707の軍用版の姉妹機ともいえるモデルで、1956年8月に初飛行しています。

 この「KC-135」、ボーイングの社内では「Model 717」と呼ばれていたことが、ボーイングの過去の文献「BOEING FRONTIERS」から明らかになっています。また、同機はアメリカ空軍によりKC-135と名付けられたのち、ボーイング社のマーケティング部門の判断で、「7○7」は商用ジェット機のためのモデルナンバーとすることを決定したとも記録されています。そのため、「717」は“空き番号”となっていたのです。

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KC-135(乗りものニュース編集部撮影)。

 そして、その後30年の時を経て「717」のモデル名を付された“現717”は、かつてあったボーイング社のライバル、マクダネル・ダグラス社にそのルーツを持ちます。

 マクドネル・ダグラス社には、数多くの航空会社が使用していた、比較的短い路線むけのベストセラー機「DC-9」シリーズ、その派生型である「MD-80・90」シリーズがありました。

 このベストセラー機の系譜をくむ「MD-95」の開発は1990年代前半から始まります。しかし、開発途中の1997年、マクドネル・ダグラス社がボーイング社に吸収合併されることになったのです。「MD-95」はそのままボーイング社の製品として開発が続けられましたが、モデル名はさすがにそのまま……とはいかなかったのでしょう。あらためて「717」の名称を「MD-95」にあたえ初飛行。「ボーイング717」として販売されることになりました。

 ボーイング717は、日本の航空会社では採用がされず、日本の空港でお目にかかることはほとんどありません。一方、ハワイアン航空やオーストラリアのカンタスリンクなどの短距離路線ではまだ健在で、国や地域によっては「よく遭遇する」旅客機ともいえるでしょう。とはいえ、「717」は2006年に生産を終えており、新型機への置き換えも進んでいるので、そういった地域でも、これから見ることのできる機会はどんどん減っていくのかもしれません。

【了】

【写真】まさかの虹色塗装!!? 日本にも実在した「717」の兄たち

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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