まるでサソリ! 尾翼でっぷりの珍スタイル3発プロペラ機「トライ・ランダー」 なぜその形に?
「トライ・ランダー」、なぜサソリのような飛行機に?
「トライ・ランダー」でエンジンの増備が図られたのは、収容力アップのため。「アイランダー」は8~9名の旅客しか乗せられなかったのに対し、「トライ・ランダー」は倍近い16人の乗客が搭乗できます。胴体も4m程度、「トライ・ランダー」の方が長くなっています。一方「アイランダー」には及ばないものの、強みである短距離離着陸性能も健在。「トライ・ランダー」も450mの滑走路から発着でき、「アイランダー」と同じく不整地でも使用することができます。
ただ、ここまでサイズが大きくなると、2発のエンジンでは力不足。実用化に不可欠な当局の型式証明を満たす出力を獲得できず、その解決のため、エンジンを増やすことになりました。ここでエンジンをどこに装備するか、というのが課題になってきます。
プロペラ機でエンジン数を増やすケースでは、機首に装備することが、もっともスタンダードな手法です。ただ、「トライ・ランダー」のデザインをできるだけ流用するとなると、それは叶わなかったそう。そこで、ボーイング727やホーカー・シドレー「トライデント」、ダグラスDC-10といった大型旅客機などの例を参考に、尾部へ装備する方針が取られたと記録されています。とはいうものの、尾翼部分は大きな再設計が必要でした。
このように開発された「トライ・ランダー」ですが、姉妹機である「アイランダー」レベルのヒット機とはならず、製造は72機にとどまりました。ただし、日本のコミューター航空でも導入があり、鹿児島を拠点とする日本内外航空がこの機を運用していました。
ちなみに愛称の「トライ・ランダー」は、エンジン3基を意味する「トライ」と「アイランダー」をかけ合わせたものです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
コメント