崩御のエリザベス女王由来の“軍艦”はある? 戦艦&空母「クイーン・エリザベス」の真相

約70年前に存在 初代英軍艦「クイーン・エリザベス」

 また、イギリス海軍には、いまから70年余り前にも「クイーン・エリザベス」の艦名を持つ軍艦が存在しています。過去「クイーン・エリザベス」と呼ばれたのは、姉妹艦が計5隻建造されたクイーン・エリザベス級戦艦のネームシップ(1番艦)で、同艦もまた、16世紀に君臨したエリザベス1世にちなんで命名されています。

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2021年5月、イングランド南部のポーツマス海軍基地に停泊する空母「クイーン・エリザベス」を、女王エリザベス2世が訪問した時の様子(画像:イギリス海軍)。

 1912(大正元)年10月21日にポーツマス工廠で起工、1年後の1913(大正2)年10月16日に進水し、1914(大正3)年12月22日に就役した戦艦「クイーン・エリザベス」は、第1次、第2次の両世界大戦に参加した殊勲艦で、就役から30年以上を生き抜き、1948(昭和23)年に除籍されました。

 エリザベス2世が即位したのは、前出のとおり1952(昭和27)年のため、さすがに彼女に由来したとは思えないものの、この戦艦「クイーン・エリザベス」が存在していたことから、空母「クイーン・エリザベス」はその名を受け継いだ2隻目の軍艦ということができます。その意味では空母の方も2世であるといえなくもないでしょう。

 ただ、ひょっとしたら今後、亡くなられた女王エリザベス2世の名前を冠したイギリス軍艦も登場するかもしれません。もし、その時に空母「クイーン・エリザベス」が現役で運用されていたとしたら、エリザベス1世とエリザベス2世、それぞれの名が由来のイギリス艦が並存することになるのでしょうか。

 そして、もしそうなった場合、艦名にどのような工夫をして両艦を区別するのか、興味深いところです。

 なお、ご崩御されたエリザベス2世の御母堂、故ジョージ6世のお妃も同じくエリザベスでした。彼女の名はエリザベス・ボーズ=ライアン。こちらを由来とするのは、イギリスの船会社キュナード・ラインが所有の客船「クイーン・エリザベス」ならびに「クイーン・エリザベス2」です。

【了】

【これが近代「QE」の始まり】“初代”戦艦「クイーン・エリザベス」の雄姿ほか

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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