相性抜群? アウトレットと高速バス 埼玉の首都圏10年ぶり新モールで地域に変革

都心~アウトレットの単独需要では収益性に難

 バス事業者の側にもメリットがあります。「地方の人の都市への足」として成長した高速バス業界は、大都市部での認知度が劣ります。大きな集客力を持ち、公式サイトの「アクセス」のページなどで積極的にバスを告知してくれるアウトレットは、大都市側の観光客を取り込む最適なパートナーといえます。

 これにはバス事業者側からの「お返し」もあります。アウトレット線の運行は大手私鉄系のバス事業者が中心ですが、大手私鉄のグループは、沿線での告知力が絶大です。電車の車内吊りや駅貼りのポスター、無料配布の広報誌など、沿線住民に訴求する多様な媒体で高速バスの情報を露出させることができます。そこには、バスだけでなく、セール(バーゲン)の情報なども掲載されますから、自ずと、アウトレット自体の情報発信にもつながるのです。

 ただ運用面では課題もあります。直行高速バスで来店する人のアウトレット滞在時間は、おおむね4~5時間です。単純に、都心を朝に出発し夕方に戻るダイヤを組むと、1台の車両と1人の乗務員を、まる1日拘束することになります。しかしながら、都心からおおむね30~40kmの郊外や、おおむね100km以下の近郊への距離では、片道運賃が数百円から千円台に留まるので、収益性に課題があります。

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東急大井町線の車内吊り広告。新路線開設時やセール期間前などに掲出される(成定竜一撮影)。

 そこで、ダイヤ作りに工夫が見られます。たとえば千葉交通らの東京~銚子線は、早朝の上り便の乗車率は高いものの、その折り返し便の需要は少ないので、朝の下り便の一部を、中間で酒々井IC近くにある酒々井POを経由させています。京王バスらの渋谷~河口湖線はもともと東名~東富士五湖道路周りでしたが、御殿場ICを降りた後、一部の便が御殿場POを経由するようになりました。

 今回開業する、東京駅・バスタ新宿からふかや花園POへの路線も、東京~伊勢崎線の一部が花園ICで関越道をいったん降りて経由するものです。他方、MOP木更津や神戸三田PO行きの高速バスは、千葉県木更津市や兵庫県三田市の住宅地から都心への通勤を担う高速バスが、大勢の通勤客を乗せて都心に着いたあと、折り返しでアウトレット線に入っています。

【写真】北関東の「東京へ高速バス通勤」が定着した街 転機はアウトレット

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