相性抜群? アウトレットと高速バス 埼玉の首都圏10年ぶり新モールで地域に変革

単なるお買い物バスではない! 拠点になるアウトレット

 このようにアウトレット行き高速バスの運用は大きく2つに分けられます。近郊立地なら中距離路線が立ち寄るパターン、郊外立地なら通勤高速バスの折り返し車両をアウトレット行きに仕立てるパターンです。いずれも、「朝に都心へ着く需要が大きい一方、大都市側を朝出発する便の需要が小さい」という高速バスの特性と、10時の開店直後にアウトレットへ着きたいショッピング客のニーズをうまく噛みあわせています。

 コロナ禍で全国的に高速バスの輸送人員が落ち込んだ中、アウトレット線は、週末には続行便(2号車)も設定されるなど影響は小さく済みました。止まっていたインバウンド需要も、FIT(個人自由旅行)の解禁で本格的に復活しそうです。円安効果により、当面、インバウンドのショッピング消費が旺盛になると思われます。

 各地のアウトレットは、ショッピングモールに留まらない地域の拠点になりつつあります。ふかや花園POには、野菜の魅力を体験できる複合施設「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」が隣接し、MOPジャズドリーム長島は、ホテルや遊園地とともに、巨大観光複合施設といえる長島温泉の一角を構成しています。そして、御殿場POは、首都圏と京阪神を結ぶ東名という大動脈と、箱根と富士山・富士五湖という二大観光地との十字路に位置し、2020年には敷地内にホテルや温浴施設も開業しました。

 さらに、御殿場PO~富士急ハイランド・河口湖線や、MOP北陸小矢部~高山線など、アウトレットと観光地を結ぶ高速バス路線も生まれています。

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三井アウトレットパーク北陸小矢部を発車する、白川郷経由・高山行きの濃飛バス(成定竜一撮影)。

 三菱地所・サイモンの柿崎部長は「周辺の観光施設との相互送客に、さらに注力したい」と話しています。今後、多くのアウトレットは単なる商業施設に留まらず観光の「ハブ」の位置づけを目指すものと考えられ、周辺観光地へのバス路線や、現地集合の着地型バスツアーなどの充実が望まれます。

【了】

【写真】北関東の「東京へ高速バス通勤」が定着した街 転機はアウトレット

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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