日本最低水準? 長崎の路面電車はなぜ運賃が安いのか にぎやか車体広告のパイオニア

「ちんどん屋みたいになる」と渋られるも説得

 この頃の長崎電気軌道は、自家用車の増加による乗客の減少で業績が急激に悪化しており、収益確保の手段として、若手社員の発案による広告電車導入の検討が始まりました。

 当時の上層部は「電車がちんどん屋みたいになる」と導入を渋り、6年がかりの説得を要したといいます。しかし、誕生した広告電車が市内の主要観光地を駆け抜ける姿は話題を呼び、渋滞に巻き込まれたドライバーへの認知度も抜群に高かったそうです。

 広告は単に収益をもたらしただけではありませんでした。塗装費用を広告主に一定負担してもらうことで、経費の削減ともなり、他都市の電車より安い運賃水準を維持する原動力になってきたのです。

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長崎電気軌道ウェブサイトより。車両の形式により広告料金が異なる(画像:長崎電気軌道)。

 なお、広告電車を走らせるための料金は税込36.3万からで、プラス製作料が必要です(2022年10月現在)。しかし観光都市・長崎は都市景観条例による規制が厳しく、計画の段階からデザインや色合いを厳しくチェックされるのだとか。

 また同社が保有する約70台の車両のうち、広告電車は一定の比率を越えないよう配慮されているそうで、路面電車の広告主となるためのハードルは決して低いとはいえません。とはいえ、同社のホームページでは型紙をダウンロードできるため、希望するデザインを持ち込んでの相談を気軽に行うことができます。

【了】

【値段に「えっ…」】長崎電気軌道の車体広告料金(画像)

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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