薄くても丈夫 錆びに強い…はずのステンレスカーが路面電車でほとんど普及しない理由

丈夫で錆に強い金属であるステンレスを使った銀色車体の鉄道車両は、いまや日本中で見られますが、路面電車の採用例はほとんどありません。なぜでしょうか。クルマと一緒に走る環境ならではの理由があります。

丈夫だと不利? 路面電車の走る環境

 鉄道車両のうち、首都圏で定着した銀色のステンレスカー。ステンレスは錆に強く、薄くしても丈夫といった利点から、通勤形から特急形の車両まで幅広く採用されています。

 しかし、日本の路面電車には現在のところ、ステンレスカーはほとんどありません。2000年代に入ってから盛んに製造されている超低床路面電車も、すべて車体は鋼鉄製です。その理由は何でしょうか。

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富山地方鉄道9000形の車体は銀色だが、これは鋼鉄の車体を銀色に塗っており、ステンレスではない(2010年1月、児山 計撮影)。

 先述の通り、ステンレスは薄くしても丈夫ですが、加工や溶接がたいへん難しい金属です。一般のステンレスカーであっても、形状が複雑な正面だけは鋼鉄やFRP(繊維強化プラスチック)が用いられるケースが多く見られるほどです。実はこの性質が、路面電車へのステンレス採用を阻んでいます。

 路面電車は道路を走るという特性から、クルマとの接触事故のリスクがほかの鉄道よりも高くなります。

 鋼鉄であれば、事故でへこんだ部分を切り取って新しい鋼板を溶接したり、反対側から叩いて形をならし、パテで成型したりすることで、比較的容易に車体を修復できます。しかしステンレスの溶接には専用の工具が必要です。また、へこんだ箇所を鋼鉄のように叩いても、曲げ加工の難しい性質が邪魔をして、折れ曲がった部分を元のように直すことはできません。そのため、路面電車では修復のしやすい鋼鉄製の車両がいまでも製造されているのです。

 なお、路面電車でステンレスを採用した例は、踏切を除き路面区間がまったくない東急世田谷線の300系ですが、車体の一部に使われているにとどまっています。

 このほか路面電車ではありませんが、道路を走る区間がある鉄道の江ノ島電鉄の500形が、車体の大部分にステンレスを採用しています。これは江ノ島電鉄が海辺を走ることから、塩害防止という観点で、錆に強いステンレスの利点を買われての採用です。

【了】

【写真】車体の一部がステンレス製の路面電車がある!

Writer:

出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。

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コメント

4件のコメント

  1. >>路面電車は道路を走るという特性から、クルマとの接触事故のリスクがほかの鉄道よりも高くなります。

    それだけではない気が。

    今、日本の路面電車のほとんどはシーメンスなどの海外製だからっていう面もあるんじゃない?

    結果、日本製車両お得意のステンレスが増えないのでは?

    • 記事に批判的な内容はコメント掲載拒否か、

      建設的な議論もできないのですかね。つまんねー。

    • 事故時の修復対応が困難だから 採用していないとの理論はなるほどと思われる様であるが、メーカーや鉄道会社に取材してのことか?記事にも有るが、踏切が無いとする東急世田谷線が採用していない理由はなぜ?記事の内容と相反するが??

  2. 世田谷線300、それから法規上の路面電車ではありませんが江ノ電の一部は車体腰板などにステンレスが使われています。他にもあるかも。

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