高性能10式戦車に勝った! 90式戦車部隊が完全優勝さらった戦車競技会 驚異の3連覇
戦車の性能差を隊員の実力でカバー
なぜ、こんなにも第72戦車連隊は強いのか、その背景には2019年に行った派米訓練が大きく関与していると考えられます。
このとき第72戦車連隊は、アメリカ陸軍最大級の訓練施設で限りなく実戦に近い環境での訓練に臨みました。ここでは「戦闘の勘」を研ぎ澄まさなければ生き残れない状況を与えられ、最初こそ苦戦したものの、彼の地でアメリカ陸軍の敵役部隊と互角に戦う実力をつけたことで、他の在道戦車部隊よりも頭一つ抜け出るほどの強さを手に入れたようです。
また特筆すべきは、第72戦車連隊は古い90式戦車を運用する部隊ながら完全優勝をさらったという点です。冒頭に記したように、今回の戦車競技会からは90式戦車と同じ土俵で10式戦車の部隊も競い合っています。
より高性能な10式戦車で挑んだ第71戦車連隊を上回る得点を出し勝利を得たのですから、隊員個人の思考過程や判断力を高めることができれば、その装備品がたとえ旧式であったとしても、ある程度はカバーできるということを証明したといえるでしょう。
ちなみに、第72戦車連隊は前出したように第5中隊が師団1位を取りましたが、第2中隊と第1中隊も、それぞれ第2位、第3位と、圧倒的な強さを見せつけてくれました。
こうなると、早くも来年の戦車射撃競技会が気になってきます。第72戦車連隊が偉業の4連覇を達成するのか。それとも第71戦車連隊や第73戦車連隊といったほかの戦車部隊が意地を見せるのか。今からとても楽しみです。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
戦車射撃競技会自体が旧態依然としていて10式の性能を生かすような内容になってないだけでしょ。
この話を美談のようにするのはどうかと思う。
先の大戦を鑑みても、軍隊は現場の努力ではなく全体的な運用するシステムを整えることで強くなるべき。本来勝って然るべき10式が負けたのならそれは自衛隊の運用の中で兵士を教育するシステムが機能していない証拠。これは糾弾されるべき話だと思う。