「四国新幹線」予定地を自転車道に? 大鳴門橋の「鉄道のための空間」なぜ残っていたか
「自転車道はあくまでも暫定」大鳴門橋に新幹線は通るのか
大鳴門橋のあとに着工・完成した明石海峡大橋が道路単独橋として建設されたこともあり、現在の「四国新幹線」計画では、明石海峡大橋に代わり、「紀淡海峡トンネル」(和歌山県~淡路島)とセットになった大阪~徳島直通ルート上に大鳴門橋が位置付けられています。
この大阪直通ルートも含め、現在の「四国新幹線」計画は複数ルート案が示されていますが、優先されているのは、瀬戸大橋を活用した岡山~松山間などのルートです。前述の通り大鳴門橋が実質単線としてしか使用できないことや、紀淡海峡の地質調査が既に十数年も止まっていることもあり、大阪ルートの優先順位は今のところやや低め。徳島県は、大鳴門橋の自転車道は「あくまでも暫定」という見解を示しているものの、そこに新幹線が通る可能性は低そうです。
自転車道にも課題 鳴門市街地は海の向こう
しかし自転車道の整備も、課題を抱えています。実は大鳴門橋も「大毛島」という長さ5kmの離島にあり、ここから鳴門市街地への自転車移動が難しいのです。
大毛島は、島内に「渦の道」を含む観光地の鳴門公園や、鳴門教育大学などもあり、島内の交通量は相当なもの。鳴門市街に向かう県道には全長440mの「小鳴門橋」が架かっていますが、歩道部分がないうえに路肩が狭く、自転車の安全が確保されているとは言えません。
橋の下には3航路の渡船もあり、これらが自転車移動によく使われています。しかし無料運航を支えていた鳴門競艇の収益減少による歳入の減少、加えて担い手の高齢化もあり、先行きにやや不安を抱えています。
大鳴門橋の下の自転車道は、着工から完成まで5年ほどを要する見通しです。完成すれば「しまなみ海道」に次ぐ本州~四国連絡のサイクリングコースとして人気を呼ぶことでしょう。それに向けて周辺の課題も整理していく時間はまだありそうです。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
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