世界唯一の乗り物「スカイレール」廃止検討 広島のニュータウンの“鉄道” 薄れる優位性

「ここしかない独自規格」のはずではなかった

 スカイレールは三菱重工・神戸製鋼が共同で1993(平成5)年に開発、2社は運営会社「スカイレールサービス」の株主でもあります。みどり坂に開業したこの路線は、ニュータウンの顔であると同時に、新しい鉄道規格のノウハウを積み上げる場所でもあったのです。

 同じように空中を走るモノレールに比べて、スカイレールは建設費が3分の1以下(1kmあたり20~30億円)で済み、無人運転が可能なため維持コストの低さも強みでした。かつ坂道に強く、ケーブルカーと違って大きくカーブすることもできます。推進システムにはロープウェーと同様のワイヤーロープを用いつつも、モノレールのように車輪が軌道を掴んで進むため、乗り心地が良く音も静か。いわば「モノレール、ロープウェー、新交通システムの良いところ取り」といえるシステムでした。

 開発2社はスカイレールを「短距離・少人数向けの交通機関」として、2例目の採用に向け、傾斜地に限らず売り込みを続けていました。国内でも次のような箇所で検討されています。

・福岡市ウォーターフロントへの鉄道整備(博多駅・天神~博多ふ頭)
・静岡空港アクセス鉄道(新幹線 静岡空港駅~静岡空港)
・大津市湖南新交通システム
・相模大野~北里大学間の鉄軌道計画

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終点・みどり中央駅。この先でゴンドラはターンして右側の発車ホームに入る(宮武和多哉撮影)。

 うち福岡市では検討8例のうち、建設費と見晴らしの良さによる魅力でロープウェーの次に有利とされていました。

 しかし上記の鉄道計画は、いずれも開業に漕ぎ着けることができませんでした。三菱重工は香港新空港で新交通システムを受注したことを足がかりに、中国・東南アジアでの売り込みを図ろうとするも、やはり不調に。鉄道規格としてのスカイレールは、広島県での採用のみにとどまったのです。

【地図】スカイレールの位置/超急勾配の絶景!!!(写真)

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コメント

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3件のコメント

  1. 題名は世界唯一になってるのに文中は日本唯一になってます。どっちが正解?

    • 広島にしかなく、国外にもないので 日本唯一、かつ、世界唯一 でどっちも正解です。

  2. 「短距離・少人数向けの交通機関」は何より自家用車が強敵すぎる