世界唯一の乗り物「スカイレール」廃止検討 広島のニュータウンの“鉄道” 薄れる優位性

意外とライバルが多い「短距離の交通手段」電気バスも以前より性能アップ

 国内での採用のネックとなったのが、短距離交通のライバルの多さです。長崎県・稲佐山では、駐車場から展望台への移動手段としてスカイレールの導入が検討されていたものの、2020年にここへ完成したのは、建設費用がさらに安く済むうえに、斜行エレベーターの扱いとなるため鉄道事業の許可が不要な「スロープカー」でした。

 炭鉱内の移動用モノレールの技術を転用した「スロープカー」は、他にも佐世保市の「桧台団地」や観光地など、国内で100例近く採用。なかにはスカイレールタウンと同様に1kmを越える登坂路線もあり、短距離・少人数移動というスカイレールの需要を奪ってしまった感があります。

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ニュータウン内ではメインとなる道路の中央部に柱や軌道が設置されている。ここにバスを通すにも道路整備が必要になる(宮武和多哉撮影)。

 また今回、スカイレールの代替手段として検討されている電気バスも、数々の実験によって急坂などの悪条件をクリアし、「エコな乗りもの」として活用の場所が広がりつつあります。千葉県佐倉市のユーカリが丘で鉄道(ユーカリが丘線)を支えてきた開発業者・山万も、電気バスの導入実験を早くから行い、将来的な連節バスの導入を検討するなど、「鉄道がエコで、いちばん安定して輸送ができる」という前提も、変わりつつあるのです。

 普通鉄道や新交通システムよりは建設費用が安いものの、これら「他の交通手段」との競争もあるなか、スカイレールが再び脚光を浴びる日は来るのでしょうか。

【了】

【地図】スカイレールの位置/超急勾配の絶景!!!(写真)

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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コメント

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3件のコメント

  1. 題名は世界唯一になってるのに文中は日本唯一になってます。どっちが正解?

    • 広島にしかなく、国外にもないので 日本唯一、かつ、世界唯一 でどっちも正解です。

  2. 「短距離・少人数向けの交通機関」は何より自家用車が強敵すぎる