エンジン本体が“回転”!? 航空ファンが驚いた「元祖ロータリーエンジン」茨城で発見!
回転する航空機用エンジンの登場
こうして見てみると、大正時代の日本にとって、フランス製のニューポール81E2および、そのコピーモデルである甲式一型練習機は主流の飛行機だったといえるでしょう。それら機体に搭載されていたのが、ノーム・エ・ローヌ(英語読みでグノーム&ローン)社の航空機用ロータリーエンジン「ル・ローヌ9C」です。
このエンジンは星形空冷9気筒の構造で、出力は80馬力と、スペック的には当時のエンジンとしてはオーソドックスな数値です。ただ、異質だったのがロータリーエンジンという点。普通ロータリーエンジンと聞くと、ピストンの往復機構とは異なる三角形の回転機構を有した自動車エンジンを想起しますが、こちらは機体に固定されたクランクシャフトを中心にエンジン本体がプロペラと共に回転する構造です。ゆえに「ロータリー・レシプロエンジン」または「回転式エンジン」と呼ばれたりもします。
このエンジン本体が回転する方式は、回転速度を安定させるフライホイールの役割をエンジン自体で担うことで軽量化にも繋がり、さらにピストンを内包するシリンダー(通常は5、7、9の奇数)が飛行しながら空中で回転することで冷却効果を高める作用もありました。そのため液体を循環させて冷却する水冷式エンジンと比べ、かなり軽量に仕上げることが可能で、その点が航空機用エンジンとして大きなメリットとなったのです。
航空機用ロータリーエンジンの歴史は古く、ライト兄弟の初飛行成功から6年後の1909(明治42)年春には、ルイとローランのセガン兄弟が創設したノーム発動機会社が自動車エンジンから出発して、星型7気筒の航空機用ロータリーエンジン「オメガ」(50馬力)を完成させています。これは同年11月に完成したアンリ・ファルマン複葉機(ファルマンIII)にも採用・搭載されています。ちなみに同機は1機が日本にも輸入されており、1910(明治43)年12月に代々木練兵場(現在の代々木公園)で我が国初の動力飛行を記録するエポックな機体にもなっています。
なお、このような特徴あるロータリーエンジンを開発したノーム・エ・ローヌ社は、第1次世界大戦中の1915(大正4)年1月にライバル会社であったル・ローヌ社を買収合併してノーム・エ・ローヌ社と改名、1918(大正7)年までに星型9気筒(110馬力)の「デルタ」などを約2万5000基も生産しています。
さらに「デルタ」エンジンは、ドイツやスウェーデン、イギリス、アメリカ、ロシアなどでもライセンス生産が行われた結果、総生産数は約7万5000基まで達しました。それにより第1次世界大戦では敵味方双方の航空機で使われる傑作エンジンにまで昇華しています。
「ノーム・エ・ローヌ社は~ル・ローヌ社を買収合併してノーム・エ・ローヌ社と改名」
どのへんが改名?
ダンタリアンの書架(2011 テレビ東京)でも主人公の乗る機体のエンジンが回転するシーンが描写されていましたね。