日本にもいた米空母艦載機A-6を覚えているか 派生型多数で半世紀も繁栄 何が良かった?

A-6要員向けの専用訓練機TC-4Cとは?

 アメリカ海軍にとってA-6とA-4、両機種のエンジンを共通化することは大きなメリットがありました。J52は1950年代から60年代にかけて軍民双方で大量に生産され使用されていたJ57エンジン(民間名JT3)を基に開発されたP&W社の主力製品です。のちにこのJ52を基にJT8Dターボファンエンジンが開発され各国の旅客機に使用されたことを鑑みると、J52が極めて優秀なエンジンであったことが判るでしょう。

 ただ、A-6「イントルーダー」は複雑な機上システムを搭載したため、乗員を養成する際にはパイロットとWSOをペアで訓練する必要がありました。そのため専用の訓練機が開発されています。

 ベースに用いられたのは、当時、A-6と同じくグラマン社が製造していたターボプロップ・ビジネス機「ガルフストリームI」です。これに、A-6の電子機器とレドームを取り付け、TC-4Cという訓練専用機が作られました。なお、TC-4Cが配備されたワシントン州ウィッドビーアイランド海軍航空基地所属の第128攻撃飛行隊は、後に海軍と海兵隊の全てのA-6要員を訓練する役割を担いました。

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1987年、ワシントン州ウィッドビーアイランド海軍航空基地で披露されたKA-6Dの空中給油デモ飛行(細谷泰正撮影)。

 また、大きな搭載量と優れた航続力を持つA-6を活用した派生型もいくつか造られています。

●電子戦型EA-6A

 最初に生み出されたのは、海兵隊の電子戦機EA-6Aです。ただ、EA-6Aは乗員2人のまま機体サイズを変えずに各種機器を搭載したため、電子戦能力も限られたものでした。とはいえ、敵レーダー信号の分析能力を持ち、レーダーサイト攻撃用の対レーダーミサイル運用能力を持っていたので重用されたようです。

 EA-6Aは、アメリカ空軍のF-105GやF-4Gといった敵防空網制圧用のワイルドウィーゼル機と同様のミッションを遂行することが可能でしたが、高度化する電子戦状況下では能力不足であったことから、改良型のEA-6B(後述)が開発されます。なお、EA-6Bが登場すると、性能不足が見えていたEA-6Aは予備役に回され、EA-6Bが電子戦訓練を行う際のアグレッサー(敵役)として用いられるようになりました。

●空中給油機型KA-6D

 次に造られたのが空中給油機型KA-6Dです。エンジンを強化し新しい電子機器を備えたA-6Eの配備が始まると、旧式化した初期型のA-6Aは一部の電子機器を外して空中給油装置を搭載、空中給油機KA-6Dに改造されました。空中給油機は艦載機の航続距離と滞空時間を延長してくれます。これは空母航空団にとって作戦能力の拡大と安全性の向上という2つの大きなメリットをもたらしてくれます。そういった役割から空中給油型KA-6Dは全てのA-6部隊に配備され、作戦にも同行しました。

【日本では未公開のレア機】EA-6A電子戦機&TC-4C訓練機 機内の様子も

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コメント

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2件のコメント

  1. A-6イントルーダーが主役と言える映画イントルーダー怒りの翼は原作デビル500応答せずを併せて読むとこの機体のミッションが理解できます。
    北ベトナムへの攻撃任務で陸地上空に到達(ドライフット)したときの緊張感や、夜間に給油機の搭乗を命じられたときの違った意味の困難さなど。
    古い作品ですがオススメ。

  2. たしか、A6を「間違えて撃墜」したのは、日本の護衛艦だったのでは