議論呼ぶ日本の「敵基地攻撃能力」保有、空自「次期戦闘機」はどう関係? “空の防衛“の未来とは
次期戦闘機と敵基地攻撃能力の関係は「限定的」かもしれない
筆者(清水次郎、航空ライター)はこれについて、あるとすれば、「限定的」そして「将来的に」ではないかと考えます。
次期戦闘機を共同開発するイギリスでは、この機は、攻撃能力を持つ多用途戦闘機「タイフーン」の後継機になるため、空自にとっても大きな攻撃力を持つものになるでしょう。ただし、相手国のミサイル基地を叩くのは1機種では足りません。
攻撃には援護の戦闘機や、対空レーダーや対空ミサイルを妨害する電子攻撃機も必要です。撃墜されたパイロット救出のために、捜索救難機は「戦闘捜索救難(CSAR)」と呼ばれるまでに力を強めなければなりません。――つまり、複数の航空機を1つのパッケージとすることが求められるのです。
もし使う空対地ミサイルの射程が長ければ、相手国の領空に入らず攻撃もできますが、領空へ入って行動を取るとなると、戦闘攻撃機だけでは「とても足りない」という現状があります。
有人の戦闘機なら、離陸後に攻撃中止の命令があれば引き返すことが出来るうえ、日本の領空内で哨戒しつつ移動式のミサイル発射施設を警戒するのにも有効と考えられます。もし、先述の「パッケージ」が整えば、次期戦闘機が一翼を担うのは間違いありませんが、整うまでは同機も含めた有人の航空機の使用は控えられると見られます。
また、次期戦闘機自体も、F-2並みの対艦攻撃力に加えて対地攻撃力も強めるなら、日本の設計陣にとっては挑戦になり、開発は時間がかかるかもしれません。
戦闘機は、島しょ防衛や日本の防空といったほかに重要な任務もあります。それゆえに、敵基地攻撃能力は多くの報道にある通り、まず巡航ミサイルが役割を担うと考えるのが、いまのところ有力でしょう。
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Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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