朝起きたら別の国に…はあり得るの? 「国境の変更」を巡る国際ルールとその事例

国が異なれば交通ルールもだいぶ変わってくるものですが、ではある日突然、目が覚めたら国が変わっていた、などということはあるのでしょうか。「国境」の変更をめぐり国際社会、ひいては人類は、どのように整頓してきたのかというお話。

ロシアによるウクライナ領土の奪取は合法?

 では、2022年末現在行われているロシアによるウクライナ侵攻によって、ロシアがウクライナの領土を奪うことは、「征服」として合法ということになるのでしょうか。もちろん、そんなわけはありません。

 そもそも、「征服」は現在の国際法上は違法とされています。というのも、20世紀半ば以降の国際法では、攻撃を受けた際に反撃する自衛権の行使など一定の例外を除き、戦争を含む武力行使が禁止されています。そのため、武力行使によって取得した領域を国際社会は容認してはならないこととされているのです。

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日本の領海等概念図。島国である日本には2022年現在、陸接国境はない(画像:海上保安庁)。

 たとえば、1970(昭和45)年に国際連合(国連)総会で採択された「友好関係原則宣言」では、その第1原則の中で、国家の領域は武力の行使やその威嚇の結果として取得する対象としてはならず、さらに各国はそのような方法で取得された領域を合法なものとして承認してはならないとされています。

 また、1990(平成2)年のイラクによるクウェート侵攻において、イラクはクウェートを併合したと主張しましたが、国連安全保障理事会はこれを完全に否定しています(決議662)。従って、ウクライナの領土がロシアのものになるということは、強制によらない形での合意に基づかない限りはあり得ないのです。

 国際法上、国家間で合意に至れば自国領土が他国のものになることは、現代でもあり得ない話ではありません。しかし、朝起きたら突然別の国になっていたなんてことは、少なくとも法的にはおよそ考えられないでしょう。

【了】

【画像】ところ変われば標識も変わる 日米独および国際連合の道路標識

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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