朝起きたら別の国に…はあり得るの? 「国境の変更」を巡る国際ルールとその事例

国境線が変わる? 国際法のルールとは

 実は「ある国やその一部が別の国になること」は、あり得ない話ではありません。国際法上、何らかの権利が生じると認められる事実のことを「権原」といい、なかでもある国が領域を正当な形で新たに手に入れることに関する事実のことを「領域権原」といいます。領域権原にはさまざまな種類がありますが、一般的には、どこの国にも属していない場所を自国のものにする「原始取得」と、他国の領域を引き継ぐ「承継取得」とに分類して説明されます。

 ここでは、後者の承継取得だけに限って見ていくことにしましょう。伝統的な国際法の下では、「割譲」「併合」「時効」「征服」の4つが承継取得に分類される領域権原として取り扱われてきました。

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かつての、樺太における日露(日ソ)国境(北緯50度線)を警備する警察官(画像:国書刊行会『望郷 樺太』より/Public domain、via Wikimedia Commons)。

「割譲」とは、国家間の合意に基づいて自国の領土の一部を他国に譲ることで、たとえば1875(明治8)年に日本とロシアとの間で結ばれた樺太千島交換条約などがそれにあたります。一方、「併合」とは、自国の領土を全て他国に譲ること、あるいは他国から全ての領土を譲り受けることで、つまりひとつの国家が消滅することを意味します。比較的最近の例では、1990(平成2)年に西ドイツが東ドイツを併合する形で東西ドイツが統合されたことが挙げられます。そして「時効」とは、他国の領域を一定期間平穏に占有することによって自国の領土とするものです。

 問題となるのは、最後の「征服」です。これは、武力を行使することによって他国の領土を全て支配するというもので、他国の領土を全て自国のものとする点で、前述した併合と共通していますが、併合はあくまでも両国間の同意に基づいて行われるのに対して、征服は強制的に行われるという点で区別されます。

【画像】ところ変われば標識も変わる 日米独および国際連合の道路標識

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