陸自の多連装ロケット砲「陳腐化」とは? ウクライナの戦線支える「現役」が廃止へ
戦果重ねるM270 なぜ日本では退役?
2022年12月16日に公表された「防衛力整備計画」(今後おおむね5年間の自衛隊による装備調達などについて定める文書)の概要を記した「防衛力整備計画の概要」(2023年1月5日公表)によると、陸上自衛隊のM270(装備名称「多連装ロケットシステム 自走発射機M270」)は2029年度までに用途廃止、つまり退役させる方針が明記されています。
その理由については、シンプルに「陳腐化」とだけ記されていますが、一体どのような背景から陳腐化したと判断されたのでしょうか。
考えられる最も大きな理由は、M270が装備するロケット弾の射程の短さです。陸上自衛隊では、運用するM270用のロケット弾として、前述のウクライナ軍で運用されているものと同じく射程70km以上を誇るM31を装備しています。
70kmというと、東京都の中心である千代田区丸の内から円を描いた場合、西は神奈川県小田原市、南は千葉県の房総半島全体がほぼすっぽり収まるほどの広さです。こう書くと、70kmという距離は非常に長大に見えます。しかし現在、防衛の必要性が高まっている南西諸島での運用を想定した場合、事情は大きく変わってきます。
九州の南方から台湾北東にかけて、約1200kmにわたり広がる島々から構成される南西諸島は、その西端に尖閣諸島を含み、さらに台湾との距離も近い与那国島や宮古島を抱えるなど、近年、安全保障上の観点から注目が高まってきています。
その南西諸島を自衛隊が防衛するとなった場合、問題となるのは島と島とのあいだの距離です。沖縄本島と各島々との距離をみてみると、たとえば宮古島とは約300km、尖閣諸島や石垣島とは約400km、さらに日本最西端の与那国島とは約500kmも離れているのです。
そうなると、射程70kmのロケット弾では、もしも南西諸島に中国軍が攻撃を仕掛けてきた場合、有効に対処することができないわけです。
退役させるなら、逆に尖閣にすべて配備し針の山にしてはどうか?運用する部隊の問題もあり、絵空事ではあるが、検討するだけでも抑止とならんだろうか?