煙が出てない! LNG燃料フェリー「さんふらわあ」ついに就航 国内初 大阪~別府航路“新時代”へ
LNG化で高くなるのか?
こうした内装の豪華さを誇る「さんふらわあ くれない」は、舶用燃料としてLNGを使用する国内初のフェリーという画期的な存在です。
LNG燃料は従来の燃料油に比べて二酸化炭素(CO2)では約25-30%、硫黄酸化物(SOx)ではほぼ100%の排出削減効果が見込めることから、赤坂社長は「今できる最善を尽くした環境型のフェリー」と説明しています。
同船には、LNGとA重油の両方を燃料として使用できるデュアルフューエルエンジン(DF)が採用されており、主機関には欧州舶用メーカーのバルチラが開発した4ストロークエンジン「バルチラ31DF」を、発電機にはヤンマーパワーテクノロジーの「8EY26LDF」を搭載しました。LNG燃料タンクは船体後部の甲板上に置かれており、外観上の特徴となっています。
特に「バルチラ31DF」は静粛性と経済性を両立した高効率エンジンで、運航を大いに支えることになるでしょう。外から見ると煙突から出る煙がほとんど見えないことがわかるかと思います。
LNG燃料の供給は大分県の別府港で、タンクローリー4台を使用して行います。別府港までLNGを輸送し、そこでスキッドと呼ばれる導管を接続して4台同時に接岸中のフェリーへ供給することで、供給時間の短縮を図るとのことです。別府国際観光港には「さんふらわあ くれない」の就航に合わせて2階建ての新ターミナルを建設。岸壁には船首と船尾両方のランプを使用できる設備や、LNG燃料供給スペースを確保しています。
LNG燃料はロシアによるウクライナ侵攻などの影響で価格が上がっていますが、赤坂社長は「原則として料金設定を値上げすることは今のところ考えていない。それよりも乗船していただく方が先決だと思っている」との認識を示しています。
「さんふらわあ くれない」に続くLNG燃料フェリーの2番船「さんふらわあ むらさき」は2023年4月14日に就航します。最新鋭船が2隻揃うことによって、大阪~別府航路のサービスは大きく向上します。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大きく打撃を受けたフェリーさんふらわあの旅客数も2019年比で80%、乗用車で100%まで戻ってきており、明るい兆しが見えています。赤阪社長は「新造船を投入することによって旅客で100%、乗用車で110~120%まで目指したい」と意気込みを語っていました。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
コメント