「他艦から燃料もらって帰ってこい」「陸軍機の着艦要求? 断固拒否」艦載機はツラいよ3選

陸軍機の着艦要求に空母「隼鷹」断固拒否!

 航空機で潜水艦から船舶を守るという構想は、旧日本陸軍の特務船「神洲丸」でも試みられました。「神州丸」は1932(昭和7)年の第一次上海事変をきっかけに誕生した陸軍船です。

「神洲丸」は、船内の格納庫に上陸用舟艇を収納し、敵前上陸を行う輸送船であり、かつ艦載機を搭載して、対潜哨戒や上陸部隊の支援を行うというコンセプトを持つ特殊な船でした。事実上、世界最初の「強襲揚陸艦」とも言える船だったのです。

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旧日本海軍の九九式艦上爆撃機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 ただ、艦載機の運用はフラットな飛行甲板ではなくカタパルトで射出するやり方。当初は陸軍の九一式戦闘機6機、九七式軽爆撃機6機を搭載していましたが、着艦できないため使いにくく(海軍から水上機を融通してもらうというプランもあったものの頓挫したとか)、後継船の「あきつ丸」では全通飛行甲板を備えた、空母型特務船に改められました。

 なお「あきつ丸」には、艦載機として対潜哨戒を主目的とする三式連絡機が搭載されていました。これらは陸軍の独立飛行第一中隊に所属しており、広島湾で訓練を行っていましたが、あるとき所属機がエンジン故障を起こします。そこで、近くにいた海軍の空母「隼鷹」に緊急着艦要請を行いました。しかし、陸軍機に対応していない「隼鷹」はこの要請を拒否。結果、当該機はやむなく「隼鷹」の横に不時着水したというエピソードも残っています。

 事故機は「隼鷹」のクレーンで引き上げられましたが、主翼が折れていたため破棄されたようです。

 艦載機は、陸地で運用される陸上機と比較して、洋上で小さな空母を基準に運用されるため、様々な制約・使いにくさはありつつも、それに適合するように開発されています。だからこそ、陸上機とは別の面白エピソードも生みやすいと言えるでしょう。

 とはいえ、このようなトリビアネタを楽しめるのも平和な証拠。筆者(安藤昌季:乗りものライター)も、戦争が起こらない世の中になることを願ってやみません。

【了】

【飛行甲板で手旗信号する兵士も】大戦を生き抜いた日本空母「隼鷹」の姿ほか

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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2件のコメント

  1. いったいどこが平和なのか?

  2. 日本海軍で『艦載機』とは、主にフロートが付いててカタパルトで射出する水上機のことを指す。
    記事で取り上げているような、航空母艦の飛行甲板を滑走して離艦する機体は、『艦上機』と呼びました。
    写真のキャプションでも九七式"艦上"攻撃機って書いてあるし。