• 2023.02.09
• 清水次郎（航空ライター）

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人工衛星や高々度偵察機が使われる現代、中国が米上空で「スパイ気球」を飛ばしました。日本でも同様の気球が出現した例もありましたが、米国はなぜこのタイミングで撃墜したのでしょうか。

実は「知らぬふり」をしていた…？

　米国が2023年2月4日、領海上空を飛んでいた中国の「スパイ気球」を撃墜したことで、2国の緊張関係が高まりました。この事件は、気球という古典的な軍事手段が、人工衛星や高々度偵察機が使われる現代であっても有効であると示す結果となったといえるでしょう。そして、ここ日本では、数年前にこれと似た気球が目撃されています。日本は、今回の事件をどう捉えるべきなのでしょうか。

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　気球は古くから偵察や観測手段として使われていましたが、第2次世界大戦以降は、高度1～2万m以上の高さを飛ぶ、ジェット偵察機が使用されることが一般的になりました。しかし、1960年に旧ソ連上空で米国のスパイ偵察機U-2が撃墜され、操縦士がソ連に捕らわれています。

　こうした危険を避けるため、次第にこうした偵察任務は人工衛星が取って代わります。長時間滞空できる無人機も加わり、現在は互いに、これらがカバーしあいながら活動しています。そうしたなか、今回の「スパイ気球」の活用は、ある意味レアな事例といえました。

　そして、冒頭のとおり、2020年6月や2021年9月に、宮城県と青森県の上空で、これとほぼ同種と疑われている気球が目撃されています。日本での気球は結局、誰がなぜ飛ばしたかは不明と結論付けられていますが、十字形の部品をぶら下げたそのルックスは、アメリカで撃墜されたものとソックリです。

　ただ、日本での目撃例も合わせると、以前から中国は継続して気球を飛ばし、そのことを米国も早くから知っていたと見られます。過去に見逃したものあったと伝えられている反面、米国はこれまであえて公にせず、“知らぬふりをしていた”とも推測できます。この行動は、中国の目的を知るためであったと考えられるのです。