三菱MRJまだいます! 三菱の技術館に夢の残り香 初飛行に沸いた頃からどう変化?

「MRJ」以外にもある “三菱の夢の跡”

 外観の塗装は2019年6月に「スペースジェット」と改称した後もMRJ時代そのままとなっています。なお、近くには「国産初のリージョナルジェット開発プログラムMRJプロジェクトは”Mitsubishi SpaceJetファミリー”へ」と書かれた説明パネルが置かれていました。

 展示されているパネルを読むとMRJに対して大きな期待がかけられていたことがわかります。解説には、最高レベルの運航経済性と、最高レベルの客室快適性を兼ね備え、大幅な燃費低減と騒音・排出ガスを削減する、「最先端技術を採り入れた次世代のリージョナルジェット機」と書かれており、MRJの性能を大きくアピールするものとなっていました。

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横浜の「三菱みなとみらい技術館」に展示されているMRJの実物大モデル(深水千翔撮影)。

 とはいえ、これは2016年2月時点のものです。この7年のあいだに航空業界では環境に配慮し、カーボンニュートラルの実現に向けた新燃料に適合する次世代エンジンなどといった技術開発が急ピッチで進められています。

 また、日本航空(JAL)グループのJ-AIRが導入したエンブラエル190型は95席と小型ながら、座席にスマートフォンやノートパソコンの充電を行えるAC電源を備えているうえ、機内Wi-Fiによるインターネットサービスの提供も始めています。後発のスペースジェットが競争力を持つには、近年のこうしたサービスにも対応する必要があったと考えられます。

 実際、スペースジェット開発中止を発表した記者会見で三菱重工の泉澤清次社長は「プロジェクトを開始してから時間が経過しており、最新の技術と比べて競争力が低下していることは否めない。これから投入する機体はSAF(サステナブルな航空燃料)対応や電動化など脱炭素化に向けた選択肢を考慮していかないといけない」と述べていました。

「三菱みなとみらい技術館」には、MRJ以外にもかつて三菱重工が手掛けた夢の跡が展示されています。巨額の損失を出して撤退した大型客船事業も、韓国や中国との競争に負けて撤退したLNG(液化天然ガス)船事業も、一時はコンテナ船やバルカーといった貨物船に代わる事業の柱に位置付けられて積極的にアピールしていたことがわかります。そして今回、その列にスペースジェットが加わることになりました。

 今後、いつまでMRJのモックアップが置かれているかわかりません。4機残る飛行試験機も保存されるかは未知数です。多くの人が携わり憧れを抱いた、夢の国産ジェット旅客機の姿を見るため「三菱みなとみらい技術館」に行ってみてもよいかもしれません。

【了】

【コックピットも見られる!】「三菱みなとみらい技術館」に展示されているMRJほか

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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1件のコメント

  1. 自らの恥を保存しておくとは太っ腹